以前胚移植に鍼治療を併用すると妊娠率の向上が見られるという記事を書きました。これに関する質問がいくつかありました。
今月号のFertility and Sterilityに「経皮的経穴通電刺激法を胚移植の前後に行う事で妊娠率が有意に上昇した」という報告がありましたので紹介します。
最初にこの経皮的経穴通電刺激法(TEAS)とは何かと言うと、導電性ゴム電極や磁石電極をツボに貼り、1Hzの低頻度刺激で経穴を刺激して鎮痛を得る方法です。実際に鍼を刺す方法とは異なります。
目的
胚移植を行う女性おいて、経皮的経穴通電刺激法(TEAS)が、妊娠率にどのような影響を及ぼすかを評価する事。
対象
45歳以下の309名の患者において凍結胚移植、または新鮮胚移植を行った。
患者は無作為に3つの群に分けた。
グループ①:99名
胚移植の30分後にTEASを行うと見せかけた群
グループ②:110名
胚移植の30分後にTEASを1回行った群
グループ③:100名
胚移植の24時間前と30分後の2回TEASを行った群
結果
グループ①
妊娠率29.3%、着床率15.0%、生産率21.2%
グループ②
妊娠率42.7%、着床率25.7%、生産率37.3%
グループ③
妊娠率50.0%、着床率25.9%、生産率42.0%
グループ①とグループ②において、
妊娠率(p=0.44)、着床率(p=0.05)、生産率(p=0.11)全ての項目で有意に成績が上昇しています。
グループ②とグループ③において、
妊娠率、着床率、生産率において率は上昇したものの、統計上の有意差は認めませんでした。
結論
胚移植の際にTEASを行う事は(特にTEASを2回行う事は)、妊娠率を有意に上昇させる事がわかりました。
この結果から言える事として
胚移植の際にTEAS行う事で有意に妊娠率が上昇しているため、TEASは効果的であると言えます。
ただこの論文はTEASに関する最初の論文のため、今後の他施設での追試により、その効果を確かめる必要あると言えます。