以前アシステッドハッチング にいて一度記事にしました。
アシステッドハッチングとは卵の殻である透明帯に穴をあけて、胚が孵化しやすくする技術です。孵化補助法と同じです。
先月号のHuman Reproduction Updateにアシステッドハッチングに関して最新のレビューが掲載されましたので紹介します。
背景
アシステッドハッチングは卵の殻(透明帯)に穴を開けて、着床率を改善させようとする方法です。
方法
医学文献の系統的なレビューとメタ解析によりアシステッドハッチングの生殖補助医療への影響(妊娠率、生産率、多胎率、流産率)を検討しました。
更に以下のサブグループに分けて各々を分析しました。
①新鮮胚移植(任意抽出、予後が不良ではない女性)
②新鮮胚移植(反復不成功例)
③新鮮胚移植(高齢者)
④凍結胚移植(任意抽出、予後が不良ではない女性)
分析は危険率(risk ratio:RR)、 95% 信頼区間にて判断しました。
結果
28の研究論文の5507名を対象に検討しました。
アシステッドハッチングにより全て対象群において妊娠率が上昇しました。(RR = 1.11, 95% CI = 1.00-1.24)
グループ②と④においては妊娠率に有意な上昇を認めました。
グループ②(RR = 1.73; 95% CI = 1.37-2.17)
グループ④(RR = 1.36; 95% CI = 1.08-1.72, P< 0.01)
しかし①、③のグループでは妊娠率の上昇は認められませんでした。
多胎率に関しては全ての対象で有意に増加しました。
(RR = 1.45; 95% CI = 1.11-1.90)
グループ② (RR = 2.53; 95% CI = 1.23-5.21)
グループ④ (RR = 3.40; 95% CI = 1.93-6.01)
結論
アシステッドハッチングにより、反復不成功例や凍結胚移植に対しては妊娠率と多胎妊娠率が上昇しました。
アシステッドハッチングにより、任意抽出、予後が不良ではない女性、高齢女性への新鮮胚移植の妊娠率は向上しませんでした。
またサンプル数が不足していたため流産率に関しては結論が出ませんでした。
この結果から言える事として、
アシステッドハッチングは新鮮胚移植での反復不成功、凍結胚移植胚移植に対しては有効となります。しかしその他のケース(高齢者等)では効果が認められない事になります。
つまりアシステッドハッチングは漫然と全例に行うのではなく、症例を選んで行う事が大切と言えます。
特に凍結胚移植の際には凍結処理により透明帯の硬化が認められるためアシステッドハッチングは有効と言えます。
Martins WP, Rocha IA, Ferriani RA, Nastri CO.
Hum Reprod Update. 2011 Jul-Aug;17(4):438-53