人工授精(以下AIH)について説明いたします。
AIHの適応
①乏精子症(濃度2000万以下)、精子無力症(運動率が50%以下)、乏精液量(精液量が1ml以下)
②射精障害、性交障害、逆行性射精
③頸管粘液不良、フーナーテスト不良、抗精子抗体陽性
④機能性不妊(原因不明)
⑤夫の長期不在(単身赴任など)
AIHのタイミング
卵管内における精子の生存期間は3日間程度。
排卵後の卵子の生存期間はMAX1日。
これよりAIHのベストタイミングは排卵2日前~排卵直前。
精子調整法について
精液には細菌が含まれており取り除く必要がある。また死滅精子を除去して成熟した精子を選別する必要がある。以下の2通りの方法がある。処理方法で妊娠率には差が無いという報告がある。
①密度勾配を利用する方法-Percoll法
②Swim up法
AIH実施方法
カテーテルには複数のものがある。ソフトタイプ、ハードタイプとあるがまずはソフトタイプを用いて入らない場合にハードタイプを用いる。
事前に経膣エコーにて子宮の傾き角度を確認したのち、慎重にカテーテルを頚管内に挿入する。この際出血しないようにゆっくり挿入する。出血させると妊娠率が低下する。またゆっくり注入することで痛みも抑える事が出来る。
AIHの成績
AIHのみでは4%、クロミッドとAIHで8%、ゴナドトロピン注射とAIHで17%との報告がある。施行回数は5~6回で累積妊娠率は頭打ちとなる。
調整後の総運動精子数が500万以下では妊娠率が著しく低下する。
凍結精子使用AIH
凍結融解後に精子の半数近くが死滅する事が多いため凍結精子を使用してのAIHは余りお勧めはできない。できれば院内で採集したフレッシュな精子を用いる事をお勧めする。長期不在などの特殊な例に対してやむを得ず凍結精子を利用する場合は例えば複数回分の精子をまとめて注入する方法で成績の改善が認められている。
卵管内精子注入法について
原因不明不妊(卵管に異常が無い場合)には卵管内精子注入法により高い妊娠率を示したという報告がある。4mlの調整精液をバルーンつきカテーテルにて卵管内へ還流させる方法。
AIHの注意点
①感染の恐れもあるため施行後は抗生物質を2日間投与する。
②事前に夫婦から同意書を取る事が望ましい。
③多胎に気をつける。事前にリスクを説明しておく。