ウォルター・アイザックソン著の『イーロン・マスク』を読んで、彼の波乱に満ちた人生とビジネスへの情熱に感銘を受けました。上巻では、マスクが南アフリカで生まれ、カナダを経てアメリカに渡り、シリコンバレーで活躍していく過程が克明に描かれており、彼の初期の事業に関する意外な事実に驚かされました。特に、彼が世界で初めての電子決済PayPalの成功を足掛かりに、得られた資金を全て宇宙産業に投入して、スペースXを創業した点や、テスラの設立当初には、単なる資金提供者だったという事実は、新たな視点を提供してくれます。すなわち、テスラで知られるイーロンマスクですが、もともとは、宇宙ビジネスに魅せられた企業家だったという点です。


下巻では、スペースXやテスラの物語に加えて、人型ロボットのオプティマスや電気自動車のオートパイロット機能の開発、脳とコンピュータを繋ぐニューラルリンク社の立ち上げ、さらにはツイッターの買収まで、彼の最新の取り組みが紹介されています。確かに、上巻に比べると新鮮味は薄れますが、それでも彼が理屈抜きで、ゴリ押しながら、新たな商品を次々と開発していく姿勢が、臨場感を持って描かれています。SF好きのイーロン・マスクが、次々にSFの世界を現実にして行く姿は圧巻です。


彼の伝記を読んで感じたのは、マスクが「現代のエジソン」と称される所以です。彼は、既存の技術を天才的に実用化し、誰にでも手の届く領域に引き下ろす能力を持った、科学者と実業家のハイブリッドのような存在です。ただし、各章が細切れで、話が寄せ集めであるため、本全体としてのまとまりに少し欠ける部分があるのも事実です。


『イーロン・マスク』伝記本は、彼の生涯とビジネス戦略を深く理解するための貴重な一冊です。彼の果敢な挑戦と、時に無謀とも言えるほどの行動力が、現代の技術革新をリードしている様子を知ることができ、非常に興味深く、読み応えのある内容でした。



イーロン・マスク53才


スペースX本社



スペースXが開発した有人宇宙船クールドラゴン