かつて日本は「一億総中流」を誇る社会だったはずだが、今やその影もない。貧富の格差を肌で感じながら漠然とした不安を抱いている人たちに、詳細な調査データでその現実を示し、衝撃を与えている本がある。発売2カ月で6万部の大ヒットとなっている新書「新・日本の階級社会」(講談社現代新書)だ。

 新たに登場した「アンダークラス」という下層階級。著者の社会学者で早大教授の橋本健二氏は、「誰でもいつでもアンダークラスに転落する可能性がある」と断言する。一体どういうことなのか――。

■貧しいけれど気楽な日常、なんてない

  ――社会の階級構造が大きく変わってきたということですが、どう変わったのでしょうか。

 これまでは「資本家」と「労働者」が基本的な階級で、その両方を併せ持った中間階級があり、その中にホワイトカラーなどの「新中間」階級と自営業者の「旧中間」階級がいるという4つからなる階級構造でした。ところが、非正規労働者がどんどん増加し、格差も拡大して労働者が「正規」と「非正規」の2つのグループに分裂してしまうようになったのです。階級構造は大きく変質し、非正規労働者という新しい下層階級「アンダークラス」が出現してきました。
 
 ――著書のタイトルに「新」を付けたのは、「アンダークラス」の登場を意味するんですね。

 ひと昔前まで非正規労働者といえば、パート主婦やアルバイト学生、定年退職後の人で、人生の一時期だけ就く仕事でした。しかしバブル期の終わり頃から、一度も正社員にならないで非正規になるといういわゆるフリーターが出てきた。その後もフリーターは増え続け、中年になり、上は今や50代になっています。彼らは非常に所得が低く、貧困状態で、結婚することも、家族をつくることも難しい。同じ労働者でも正社員とは全く異なるグループなのです。