2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の建設をめぐり、日本スポーツ振興センター(JSC)は16日、国が費用の一部負担を求めている東京都との負担額の合意を先送りし、ゼネコン業者と工事契約を結ぶ方針を固めた。19年3月完成に向け、契約を7月上旬よりも遅らすことができないため。2500億円程度まで膨らむとの指摘もある総工費の詳細を都に示すことも契約額が業者と合意に達した後にする方針で、舛添要一知事の反発が予想される。

 都と交渉してきた文部科学省は当初、都から費用の一部負担への同意を得た上で、JSCが業者と契約を結ぶ計画でいた。このため、下村博文文科相が5月18日に舛添知事を訪問して会談。競技場周辺の整備費などとして500億円の負担を求めたが、舛添知事は「(周辺整備費として)支出できるのは50億円程度」との認識を示し、最終的な総工費の概算額の内訳と、負担額の算定根拠を明示するよう求めた。

 しかし、JSCが算出中の総工費の概算額は、業者と随意契約を結ぶ際の「予定価格」とほぼ同額になるため、JSCや文科省は契約額が業者と合意に達し、金額が確定するまでは公開できないとしている。一方で、完成時期の順守は国際的な信用問題にかかわるため都から負担額について合意を得るよりも、業者側との契約を優先することにした。JSCは業者と契約額で合意した後に総工費の詳細について都に公表する。

 舛添知事は膨れあがる総工費の原因の一つとされるデザインの見直しについても「議論すべきだ」との立場を表明しており、負担額について合意のないまま現行案で契約が行われれば、溝はさらに深まりそうだ。