(天野…ないな、荒井…可能性アリ、石田…ないな、上原…)
「修斗~飯食おうぜ~」
疑惑の金沢先生担当授業、数学が終わり、
昼休みになっていた。
(倉田…うーん、木田…あるな、木下…怪しい、楠野、小杉…)
「修斗~飯~」
クラスメートたちは机を向かい合わせ
談笑しながら昼食を採っている。
少年、三浦修斗もまた、
友人と向かい合い弁当を広げているのだが…
(坂口…ない、堺…知ってるかも、篠原…ない、須田、隅田…)
「修斗!」
「へ?」
まったく、弁当に手をつけず、
何かを書くことに没頭している修斗を
友人の一人が不思議そうに訪ねてくる。
「飯、食わないの?」
「あ、食うよ。…あ、てめ、唐揚げ食ったな」
「俺じゃねーよ」
んじゃ、誰だよ?と聞こうとしたが
周りにいる男子たちで怪しいヤツは
1人しかいない。
「たーなべ♪?」
「おー、どうした修斗!」
「俺の唐揚げ食っただろーがぁ!」
「食べました☆」
中段回し蹴り…昔の格ゲーでいう
竜巻旋風脚っぽいなと
思い得意技にしている。
「だぁ、出た!必殺技!」
「すんでの所で避けやがって!」
「落ち着けって修斗…
てかさっきから何書いてんの?」
「いや…それは…」
追い詰めていたはずの田邊から
質問されたことで怯んでしまった
どうやら田邊以外の友達も
それが不思議だったようで
修斗の答えに注目しているようだ。
「ら、来週球技大会あるだろ?
サッカーのチーム考えてた!」
友人たちには隠すことにした。
もし、本当に仲澤ハナだったら
大騒ぎになるかもしれないし
そもそも俺の友達に仲澤ハナを知っている
オタクっぽいヤツはいないだろうから
協力を得ることもできなそうだ
「で、その名前の横についてる
○、△、×はなんだ?」
「え、えーとチーム分け!」
…というのは嘘で金沢先生の疑惑に
気づいていそうな人間から順に
マークを付けていただけだ。
「そうなのか?
…だったら×チーム強すぎだろ!」
「そ、そうか…な…?」
「だって、○チーム、運動できない
オタクっぽいヤツばっかじゃん」
不満そうに田邊が言うと
用紙を見た他の友人も
同意見というようにうなづいている
「みんなもやっぱそう思うか?」
「そらそーだ!
チーム片寄ったら総合優勝なくなるぜ?」
「だよなー」「田邊の言う通りだ」「頼むよ、修斗ー」
一斉に非難された…
確かに、これがチーム分けで
○が付いている人間が
チームでサッカーなんてやったら
クラスの足を引っ張るのは目に見えている。
「ご、ゴメン…わかった、考え直しとく」
多少、傷ついたがクラスの共通意識として
○がついた生徒はオタクっぽいと
認識されているようだ。
予想外ではあったけれど第三者からも同意を得られたのは心強い。
ならば、この生徒たちに声をかけてみれば
金沢先生を疑っている人物がわかるのでは…
というのが修斗の作戦だ。
さいわい、午後の授業には体育があるため
普段の授業よりは話しかけ易いだろう。
その後、他愛のない話などをして
昼休みはいつもどおり終了した。
鋭気を養うという名目で
5時限目の現代文は睡眠に当てた。
目を覚ますともう教室に女子の姿はなく、
男子の更衣室となっていた。
鈍痛の頭をなんとか起こし
あわてて校庭へ向かった。
照りつける太陽がジリジリと
眠い目を焼いてくる。
まだ、夏になるには早すぎるが
異常気象かその足音が聞こえてくるようだ
「よーぅし!今日は走り高跳びだ!
全力で宙を舞え!」
(ただでさえ、暑いのに暑苦しい教師だな)
などと考えながらポールとマットを
用意し終えると
ボソボソと不気味に話している○チーム…
いわゆるオタクな一団が
校庭の石を取り除くという
なんとも地味な仕事をこなしていた。
なんとなく気が進まなかったが、
現状打開策としてあの中にいるであろう
Bチャンネルのスレ主を探さなければ…
「なぁ、ちょっといいか?」
「な、なに?」
驚かすつもりはなかったのだが
オタク軍団の誰もが俺の顔を見て
焦るように目線を移動している。
「あのさ、教育実習の
金沢先生っているじゃん?」
「か、金沢先生?」
脅してるわけじゃないのに相手があからさまな
警戒心を出してくるので話しづらい。
「うん、仲澤ハナに声似てないか?」
「わたくしはロボットアニメ専門なゆえ、
女性声優はわかりませぬ」
と言うのは木下…
体格は不摂生にでかく、
なんとなく不潔感がある
「し、知らないです。
あ、アニメよ、よりは原作小説派なので…」
消えそうな細い声は木田…声と同じく、
体型はまるでつまようじのように弱々しい。
できることなら木下の
体重を分けてあげればいいのにと
修斗は思った。
木下、木田以外のオタク軍団にも話を聞いたが
芳しい結果は得られなかった。
(仲澤ハナって知名度うすいな…)
悶々としつつ、高跳びの試技を終えると
「おぅーし!今日はそこまでだ!
用具を片付けて解散!
手洗えよ!また来週ぅ!」
暑苦しい声で授業終了が告げられ
チャンスだと思った
体育の時間が終わってしまった。
そして、修斗は大事なことに気づく…
(あ…スレ主って…女子かも…しれない…よな)
-つづく-
「修斗~飯食おうぜ~」
疑惑の金沢先生担当授業、数学が終わり、
昼休みになっていた。
(倉田…うーん、木田…あるな、木下…怪しい、楠野、小杉…)
「修斗~飯~」
クラスメートたちは机を向かい合わせ
談笑しながら昼食を採っている。
少年、三浦修斗もまた、
友人と向かい合い弁当を広げているのだが…
(坂口…ない、堺…知ってるかも、篠原…ない、須田、隅田…)
「修斗!」
「へ?」
まったく、弁当に手をつけず、
何かを書くことに没頭している修斗を
友人の一人が不思議そうに訪ねてくる。
「飯、食わないの?」
「あ、食うよ。…あ、てめ、唐揚げ食ったな」
「俺じゃねーよ」
んじゃ、誰だよ?と聞こうとしたが
周りにいる男子たちで怪しいヤツは
1人しかいない。
「たーなべ♪?」
「おー、どうした修斗!」
「俺の唐揚げ食っただろーがぁ!」
「食べました☆」
中段回し蹴り…昔の格ゲーでいう
竜巻旋風脚っぽいなと
思い得意技にしている。
「だぁ、出た!必殺技!」
「すんでの所で避けやがって!」
「落ち着けって修斗…
てかさっきから何書いてんの?」
「いや…それは…」
追い詰めていたはずの田邊から
質問されたことで怯んでしまった
どうやら田邊以外の友達も
それが不思議だったようで
修斗の答えに注目しているようだ。
「ら、来週球技大会あるだろ?
サッカーのチーム考えてた!」
友人たちには隠すことにした。
もし、本当に仲澤ハナだったら
大騒ぎになるかもしれないし
そもそも俺の友達に仲澤ハナを知っている
オタクっぽいヤツはいないだろうから
協力を得ることもできなそうだ
「で、その名前の横についてる
○、△、×はなんだ?」
「え、えーとチーム分け!」
…というのは嘘で金沢先生の疑惑に
気づいていそうな人間から順に
マークを付けていただけだ。
「そうなのか?
…だったら×チーム強すぎだろ!」
「そ、そうか…な…?」
「だって、○チーム、運動できない
オタクっぽいヤツばっかじゃん」
不満そうに田邊が言うと
用紙を見た他の友人も
同意見というようにうなづいている
「みんなもやっぱそう思うか?」
「そらそーだ!
チーム片寄ったら総合優勝なくなるぜ?」
「だよなー」「田邊の言う通りだ」「頼むよ、修斗ー」
一斉に非難された…
確かに、これがチーム分けで
○が付いている人間が
チームでサッカーなんてやったら
クラスの足を引っ張るのは目に見えている。
「ご、ゴメン…わかった、考え直しとく」
多少、傷ついたがクラスの共通意識として
○がついた生徒はオタクっぽいと
認識されているようだ。
予想外ではあったけれど第三者からも同意を得られたのは心強い。
ならば、この生徒たちに声をかけてみれば
金沢先生を疑っている人物がわかるのでは…
というのが修斗の作戦だ。
さいわい、午後の授業には体育があるため
普段の授業よりは話しかけ易いだろう。
その後、他愛のない話などをして
昼休みはいつもどおり終了した。
鋭気を養うという名目で
5時限目の現代文は睡眠に当てた。
目を覚ますともう教室に女子の姿はなく、
男子の更衣室となっていた。
鈍痛の頭をなんとか起こし
あわてて校庭へ向かった。
照りつける太陽がジリジリと
眠い目を焼いてくる。
まだ、夏になるには早すぎるが
異常気象かその足音が聞こえてくるようだ
「よーぅし!今日は走り高跳びだ!
全力で宙を舞え!」
(ただでさえ、暑いのに暑苦しい教師だな)
などと考えながらポールとマットを
用意し終えると
ボソボソと不気味に話している○チーム…
いわゆるオタクな一団が
校庭の石を取り除くという
なんとも地味な仕事をこなしていた。
なんとなく気が進まなかったが、
現状打開策としてあの中にいるであろう
Bチャンネルのスレ主を探さなければ…
「なぁ、ちょっといいか?」
「な、なに?」
驚かすつもりはなかったのだが
オタク軍団の誰もが俺の顔を見て
焦るように目線を移動している。
「あのさ、教育実習の
金沢先生っているじゃん?」
「か、金沢先生?」
脅してるわけじゃないのに相手があからさまな
警戒心を出してくるので話しづらい。
「うん、仲澤ハナに声似てないか?」
「わたくしはロボットアニメ専門なゆえ、
女性声優はわかりませぬ」
と言うのは木下…
体格は不摂生にでかく、
なんとなく不潔感がある
「し、知らないです。
あ、アニメよ、よりは原作小説派なので…」
消えそうな細い声は木田…声と同じく、
体型はまるでつまようじのように弱々しい。
できることなら木下の
体重を分けてあげればいいのにと
修斗は思った。
木下、木田以外のオタク軍団にも話を聞いたが
芳しい結果は得られなかった。
(仲澤ハナって知名度うすいな…)
悶々としつつ、高跳びの試技を終えると
「おぅーし!今日はそこまでだ!
用具を片付けて解散!
手洗えよ!また来週ぅ!」
暑苦しい声で授業終了が告げられ
チャンスだと思った
体育の時間が終わってしまった。
そして、修斗は大事なことに気づく…
(あ…スレ主って…女子かも…しれない…よな)
-つづく-