たたりじゃ〜 | 奇は奇術師の奇

たたりじゃ〜

原作者と脚本家の話が、

ネット界隈を賑わしているけども、

こと小説の映像化の場合は、

原作から飛躍して、全く違う趣の作品になってしまう方が、

良い作品になるような気がする。

 

東宝特撮の名作『海底軍艦』(本多猪四郎/監督 関沢新一/脚本 1964年)の原作なんて、

明治時代に書かれた『海島冐險奇譚 海底軍艦』(押川春浪/著 1900年)

という空想科学小説なのだから、当然、大日本帝国海軍や戦後平和憲法など、

出てはこない。

 

旧ソ連の映画監督アンドレイ・タルコフスキー氏を世界的に有名にした

カンヌ審査員特別賞の『惑星ソラリス』(1972年ソ連)なんか、

原作(スタニスワフ・レム 1961年)にない地球での

主人公の家族の話がが前半1時間程ある。これが映画独自のオチに

関わってくるのだから素晴らしい。

後にレム氏とタルコフスキー氏は大喧嘩になったそうだけどね。

 

それで、横溝正史氏の『八つ墓村』(1971年)。

何度も映像化されているが、特に名作(迷作?)と名高い

1977年の松竹版(野村芳太郎/監督 橋本忍/脚本)など、

『山奥の山村での推理ミステリー』を

『伝記ホラー超大作』に変えてしまっているのだ。

 

ずいぶん前に原作読んだけども、確かに人物の設定などのいくつかは

踏襲しているが、映画は舞台を制作時の1977年に変えているし、

おまけに寅さんこと渥美清氏が金田一耕助役だなんて、

東宝の石坂浩二氏や、テレビの古谷一行氏とイメージ違い過ぎ。

なのだけど、原作者横溝氏はこの渥美清さんの金田一が

大変お気に入りという。そして、ほんまに祟りになる点。

原作とは全く別物と思わないとやっていられないね。

それでも映画は大ヒット。

 

考えてみれば、この『八つ墓村』同監督と脚本の前作は

あの超名作『砂の器』(1974年 松竹)なのだ。

原作(松本清張/著 1961年)の数行の描写を

警察での捜査会議と、ピアノコンサート演奏と父子が放浪する

三つのシーンを交互に組み合わせることで映像でしかできない

屈指の名シーンを生み出していた。

ここは役者、音楽、映像が三位一体となっていて、何度見ても号泣。

 

そんなわけで、小説というのは映像とは異なるので、

監督、脚本のイメージの投影が勝負なのだなあ。

 

その八つ墓村が、15日まで公式無料配信中だって、

 

 

この映画すごいのは音楽、

芥川也寸志氏の壮大な音楽が、大いに大作感を醸し出している。

メインテーマや、山崎努氏の凶行シーンも素晴らしいけど、

なんと言ってもショーケンと小川真由美さんが鍾乳洞を捜索する

シーンに流れる『道行のテーマ』が最高。

映画公開時にラジオで流れていて、子供だった私は、ものすごく

心底感動したのだ、 ぜひご一聴ください。

 

 

というわけで、映像と原作は別物とした方が良い。

そう思えないのなら、原作使用許可は出さない方が良いと思う。

 

まあ、小説と、漫画はまた違うからなあ。