どうして新NISAなんてやってしまったんだ…60歳元会社員“退職金2,000万円”がみるみる減って大後悔「退職日に戻りたい…」【元野村證券セールスマンの助言】

2024/09/23

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(※画像はイメージです/PIXTA)

(※画像はイメージです/PIXTA)© THE GOLD ONLINE

人生でもっともお金がかかるといわれる教育費、住宅費、老後資金の三大支出。現役時代に子どもの教育費と住宅ローンの返済に追われ、老後資金準備をあと回しにしてきたという人は少なくないでしょう。そのようななか、退職金を元金に「老後資金を増やしたい」と初めての投資にチャレンジするシニアがいます。本記事では、資産コンサルティング会社の代表を務める堀江智生氏が、カネダさん(仮名)の事例とともに新NISAに潜む落とし穴と、シニア投資で失敗した場合のリカバリー方法を解説していきます。

定年退職後、新NISAにチャレンジするも…

プラスチック容器の製造・販売などを扱う中小企業に新卒で入社したカネダさん(仮名)。仕事にやりがいを感じ、60歳の定年退職まで勤め上げました。

「おお! うちの会社は大企業じゃないが、退職金を2,000万円ももらえたぞ!」退職金は自分の給与の一部の積み立てとわかっていても、いざもらってみるとご褒美のようで嬉しいもの。無駄遣いせず、大切にしようと心に決めます。

カネダさんの2人の子どもは私立の大学出身で、2人とも1年浪人をしています。教育費が想定以上にかさんだため、老後の貯蓄は少なめ。このままでは老後資金が心配です。

定年退職後は工場の事務職に転職し、働き続ける選択をしました。ですが、いつまで働き続けることができるかはわかりません。働けなくなったあとが心配なカネダさんは、少しでも老後資金を増やそうと新NISAにチャレンジすることに。

勝率を高める運用を行う

投資は損が出る可能性がある……といっても、実際に損失を許容できる人は少なくないでしょう。しかし、3つの鉄則を守れば投資で損をしない確率が高まることが知られています。3つの鉄則とは「長期・分散・積立」の3つで構成されます。

1.長期投資:過去の大幅下落「リーマンショック」を振り返ると…

投資の成績を振り返るとき、ある年のパフォーマンスだけを振り返ると、資産が減少していることがしばしばあります。

たとえば、ある年に5%の利益がでていたとしても、その翌年には10%の損失が発生する、といった事象は珍しいことではありません。しかし、下落局面を経験しても粘り強く投資を続けていれば、高い確率で利益がでることは歴史が証明しています。

2008年に起きたリーマンショックでは、多くの株式が下落しましたが、その後は元の値を回復し、現在では下落前よりも高い株価がついている銘柄は少なくありません。 実際、米国を代表する株価指数であるS&P500は、リーマンショック時に約45%下落しました。その後約3年間で株価は回復し、現在ではリーマンショック時の約3.3倍の価格となっています。

長期的な目線をもって運用を続けることが、資産を増やすうえで重要になります。

2.分散投資:S&P500が人気だが…

投資を行う対象となる金融商品は、株式のほかにも債券や不動産(REIT)、金などさまざまな種類が存在します。異なる種類の金融商品を持つことは、資産を下落相場から守るうえで重要な戦略となります。

仮に、ある国で戦争が起きた場合、その国の株式は下落する可能性が高いです。一方で、戦争が起きたときには安全資産とされる金の価値が上昇しやすくなります。金と株式を保有することで、株式だけを持っていた場合よりも資産の減少を抑える効果が期待できます。

「新NISAの枠内で購入できる投資信託」と一言でいっても、実際に投資対象となる金融商品はさまざまな種類があります。新NISAでは、時価総額が高いS&P500が人気ですが、S&P500などの株式指数に連動した投資信託が、株式のみを投資対象としているのに対して、「バランス型」と呼ばれる投資信託は株式以外にも、債券や不動産(REIT)、金なども投資対象としています。

購入を検討している投資信託がなにを投資対象としている商品であるのか、よく調べてから投資を行うことが重要になります。

3.積立投資:ドルコスト平均法の実践

最適なタイミングで投資を開始することは、投資のプロであっても困難です。投資の開始時期を分散できる積立投資は、投資対象を高値掴みして安値で手放す事態を回避するために有効な手法です。

積立投資のなかで、毎月一定金額を積み立てる「ドルコスト平均法」を実践することは特に効果的でしょう。相場の下落局面では購入できる投資信託の数量が増加するため、安値で多くの投資信託を購入することにつながり、より大きな収益が期待できます。

多くの証券会社が一定の頻度・金額での投資設定に対応しており、投資初心者の全でも容易に実践することができます。「長期・分散・積立」の3原則のほかにも、資産運用を行ううえで重要な考え方があります。

リスク許容度に合った運用を行う

資産運用では、投資家自身のリスク許容度を把握することが重要になります。リスクとは、運用している資産が増えたり減ったりする金額の振れ幅のことを指します。自分のリスク許容度を知るためには、どれだけ資産が減少しても許容できるかを基準に考えるのがよいでしょう。

一般的に退職金の運用では、リスクを抑えた運用をお勧めします。というのも、リタイア後は現役時代と比べて、手取り額が減少するからです。現役時代は安定した収入があるため、運用資産が下落しても、その価値が回復するまでゆっくりと待つことができます。

しかし、リタイア後は運用している資金を切り崩して生活するため、大きな下落相場が到来した場合、取り崩す金額が一定だったとしてもより多くの割合で資産を切り崩すことになってしまいます。

新NISAの枠内でリスクを抑えるためには、数種類の金融商品に投資できる「バランス型」の投資信託も選択肢の1つとなります。また、債券や不動産など比較的安定した資産を投資対象とする投資信託を選ぶことも有効な戦略となるでしょう。

「アクティブ投信=悪」ではない

新NISAの投資先として、手数料が高いアクティブ投信を選択する必要はない、という意見をしばしば見かけます。

確かに「インデックス型」の投資信託のなかでも、S&P500や全世界株式指数に連動した商品は、安価な手数料でありながら良好なパフォーマンスを記録しています。多くの投資家にとって十分な成績を収めてきたことは疑いようがありません。

しかし、本来「アクティブ型」の投資信託は「インデックス型」の投資信託のパフォーマンスを上回ることを目指して運用されています。多くの「アクティブ型」の投資信託の運用成績が、「インデックス型」に対して劣後しているものの、なかには「インデックス型」を上回るリターンを記録し続けている「アクティブ型」の投資信託も存在しています。こうした「アクティブ型」の投資信託は、優れた運用体制などによって、再現性の高い好成績を記録しています。

「インデックス型」よりも高い手数料を支払うとしても、それ以上に良好なリターンが期待できる「アクティブ型」投資信託であれば保有を検討してもよいでしょう。

投資のゴールを明確にする

投資の世界では、大きなリターンを得るためには積極的にリスクをとる必要がある一方で、そこまで利益を求めないのであれば、リスクの低い運用で事足ります。

「なんのために運用するのか?」「資金をどれだけ増やす必要があるのか?」を把握することは、不要なリスクを避けるために重要になります。

自分にとって必要なリターンとリスクを見極めるためには、Excelなどを使用して将来の試算推移をシミュレーションすることが有効な手段となります。

こうしたシミュレーションを行うためにはある程度のパソコンスキルが必要となりますが、現在では面談を行いながら試算を行うサービスも提供されています。こうしたサービスのなかには、投資についてアドバイスを受けることができるところもあるので、利用を検討することも選択肢となるでしょう。

運用リスクを下げる決断

カネダさんは、次のようなアドバイスを受けました。

・積立で1,800万円を投資していて、500万円もの損失が生じるのは歴史的な暴落局面なため、いま持っているアクティブ投資信託を持ち続けて、価格の回復を待つことが賢明

・夫婦の公的年金を考慮すると、積極的な運用を行わなくても95歳まで資金寿命を延ばすことができる

・保有しているアクティブ投資信託は株式のみを投資対象としていて、資産が目減りするリスクを余計にとっている

「子どもには資産を残さないほうが、結果的に子どものためになる」という考えを持っていたカネダさんは、助言をうけてアクティブ投資信託の価格が回復することを待ちつつ、運用のリスクを下げる決断をしました。

幸いにも、ほどなくしてアクティブ投資信託の価格は回復し、損失は100万円にまで減少しました。このタイミングでカネダさんは、運用していたアクティブ投資信託をすべて売却、万が一のために500万円を現金として保有しつつ、残りの1,200万円を外国債券の購入に充てることにしました。

購入した債券は、債券を発行した企業が破綻しない限り毎年約40万円弱の利金を受け取ることができるものです。カネダさんは3年程度で当初の損失を取り戻すことができる計算になります。

また債券から得られる利金で、株式を中心としており過去の運用実績が良好なアクティブファンドを成長投資枠を利用して購入し、運用効率を高めることにしました。元手が利金なため、無理のない範囲での投資となります。

結果として、株式と比較して債券を多く保有することになり、相談前と比較してリスクの小さいポートフォリオが出来上がりました。これにより、カネダさんは日々の値動きに一喜一憂することも減って、趣味の釣りも楽しめるようになりました。

資産運用をはじめて、みるみるうちに資産が減ってしまっていた当時を振り返り、カネダさんは次のように語ります。

「思ったよりも子どもの学費がかさみ老後の資金に不安を感じていたところに、メディア等で資産運用の必要性が声高に叫ばれていたことで、焦って投資を始めてしまった。はじめて購入したアクティブ投資信託は、インターネットで見かけて“よい”とおすすめされていたので買ってみたが、自分の状況に合致しているか吟味することはしなかった。投資対象についてよく理解していなかったがために、日々の値動きが気になってしまい落ち着いて生活することもままならなかった」

一方で、ポートフォリオ見直し後の生活については次のようにいっていました。

「専門家に相談してみて、自分が必要以上のリスクをとって運用していたことに気が付いた。インターネットで得られる情報はたとえ正しい情報であっても、必ずしも自分にとって最適であるとは限らないことを知った。いまでは投資について定期的に勉強することで、自分に必要な投資情報の取捨選択を心がけている」

カネダさんのように、あまり投資について学んでいない状態で投資を始めた結果、必要以上にリスクをとって退職金を運用してしまっている個人投資家の方は少なくありません。

退職金は長年会社で勤め上げた結果の大切な資金だからこそ、各々の将来計画を見据えた資産運用が重要になるでしょう。

堀江 智生

株式会社Japan Asset Management

代表取締役

株式会社Japan Asset Management 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第837号

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