マザー

鈴木慶一「MOTHER」

リリース : 1989年
ジャンル : ポップ、ゲーム音楽

ゲームサントラレビュー第1弾です。知る人ぞ知る名作ゲーム「MOTHER」の名作サントラです。まぁ厳密に言えば、アレンジ曲(10トラック)+原曲のサントラ(1トラックにまとめて収録)+ボーナスアレンジ曲1曲(再販版にのみ収録)です。このようにアレンジ曲が大多数を占めています。

えー、アレンジ曲?って思う方もいらっしゃるかもしれません。アレンジ曲っていうとアレンジャーの解釈が入ったり、ゴージャスに仕上げようとしがちだから、原曲のイメージを崩しやすいっていう印象ですけど、これは上手く原曲の雰囲気を保ちつつ、生の音でアレンジされています。英語の歌詞で歌ってる曲もあるんですけど、それでも「MOTHER」の世界そのまんまです。「MOTHER」の世界で洋楽を聴いている感じですかね。そうゆう意味でアレンジをされた鈴木慶一さん(ムーンライダーズ)は素晴らしい。ちゃんとどれが必要であって必要でないか分かってますね。まぁ作曲されたのも鈴木慶一さんですが。(笑)もはや鈴木さんのソロ作品といっても差し支えないくらい作り込まれています。(一部、名ゲームミュージック作曲家・田中宏和さんとの共作もありますが、そちらも遜色ないです)また、原曲のチップチューン(ファミコンの音の原曲)も入っているので、アレンジされた曲と比較してみたら面白いと思いますね。

以前、雑誌のインタビューで鈴木さんが「音楽に興味がない人にこそ、しっかりした音楽を作らなきゃダメなんだ。ゲームのBGMとはそういうものだ。」的なことを言っていたのですが、そうだと思いますね。ゲームの音楽とは、音楽を聴くためにあるんじゃなくて、あくまで場を盛り上げたりするBGM的な役割があると思うんですけど、そういう"空気"をきっかけに音楽に興味を持つ人もいると思うんです。その入り口がしっかりしてないと興味を持ってくれないし、その入り口の音楽を基準に新しい音楽を聴いていくこともあるから、普通の音楽より手を抜いてはいけないと思うんです。ファミコン版の音楽を作る時は、使える音が限られてくるから余計苦労したとおっしゃっていました。田中宏和さんの助けがなければ出来なかったと。しかし、その苦労があったからこそ、「MOTHER」の音楽は素晴らしく、アレンジで更なる輝きを見れたんだと思いますね。

こんな音楽のような世界があったら、そこに行ってみたいですね。筆者はそう思います。ハッピーって思わなくなるほどハッピーなんでしょうね。人生って素晴らしいって感動できるんじゃないでしょうか。筆者は、このCDに出会えてよかったです。一万円で売っていたとしても買うでしょうね。(← ウソです。)これが3千円もしない値段で、幸せなひとときが買えるんですからお得です。ひとりでも多くの人に聴いてもらいたいですね。誰かの誕生日にプレゼントで送ってあげようかな。着払いで!(笑)

このCDは一度廃盤になって、署名運動が行われて再販版が出たり、オークションで高値がついたりしたらしいですけど、それも納得です。ゲーム音楽には興味がない方でも、音楽好き(特にハッピーな洋楽好き)なら絶対気に入ると思いますね。ゲーム音楽通としては名盤。音楽通としては隠れた名盤ですね。

全曲、甲乙つけがたいですが、個人的ベスト・トラックは「Fallin' Love, And」で。