In The Court Of The Crimson King

King Crimson「In The Court Of The Crimson King」

リリース : 1969年
ジャンル : プログレッシブ・ロック (イギリス)

ようこそ、クリムゾン・キングの宮殿へ。ここには21世紀の精神異常者がいたり、墓碑があったり、帰ってきた魔女がいたり、踊っている操り人形がいたりする宮殿です。行ったことない人は是非訪れてみてください。世界観変わりますよ。扉はいつでも開いています。扉を叩くのはあなた自身です。とても巨大な宮殿のため、案内書を下に記しておくので参考にしてみてくださいね。

「21st Century Schizoid Man」では、ディストーションの効いたヴォーカルにジャジーでメタリックなサウンドが、聴いている人をアルバムに引き込みます。途中の演奏が凄い。その熱気に圧倒されたら「I Talk To The Wind」で庭に出て風に吹かれてみたりしてはどうでしょうか?「Epitaph」や「Moonchild」と合わせて、これらは、メロトロンやフルートにより浮遊感のある幻想的な雰囲気を味わえます。特に「Moonchild」でのジャズインプロヴィゼージョンでは、曲の表現の自由度を上げ、心の解放をも感じられます。そして宮殿の内部「The Court Of The Crimson King」は、以後多くのプログレロックバンドが創り出すシンフォニックなサウンドの原点になりました。辿り着いた時には、内部を飾る音の装飾とそれを支える巨大な柱に圧倒されるでしょう。そして王の座に座るキングクリムゾンにも。

このように、様々なジャンル(ジャズ、クラシックなど)を融合したりして複雑に組み立てられたイマジネーション、それを具現化するための十分な演奏力、その隙間に隠し込まれた哲学的なリリック。そのどこを掴み取っても、スライムのように、互いが互いを求め合ってリバイバルするような、全ての要素が上手く融合されている作品だと思います。そしてそれは、どこを切っても、キングクリムゾンの音楽だと分かる凄みがあるんです。

この作品は、音楽はもちろんジャケットのインパクトも手伝って、ビートルズの「アビーロード」をチャート1位の王の座から蹴落としました。(しかもこれがデビュー作!)そういう意味も含めて、いろいろな伝説の作品です。この作品に出会って、僕はプログレを巡る旅に出かけるようになりました。そして今でも僕はこの宮殿に帰ってきます。ちょっと忘れ物したりした時とか。心を落ちつけたい時とか。その度に風が語ってくるんです。きっと僕は死ぬ直前に叫ぶことでしょう。我が墓碑はここにあると。混乱こそ我が墓碑銘だと。