時代は移りゆくが、変わらないのは
男と女とのつるみ。
ひとはつるみのこれを秘かに愛す。
喜多川歌麿の「婦美好図理(ふみすず
り)」は3巻の長編小説で、その艶
本の中からつるみにまつわる4つのあ
な噺。
婦美好図理(ふみすずり)
留守居
若衆
サア〱隣へ聞こえてもかまうことはね
えから、思いきりよがりなせ。
おれがのは指人形どころか腕人形だ。
冥利、々々。
女
上方へ行く留守居にお前のようないい若
衆を頼むとは、気のきいた亭主もあれば
あるものだ…。
それもう、よくて〱ならぬ。
マラも手も一緒に入れておくれ。
それ、いく〱。
湯
女
これ、権七、手前は大それた者だ。
湯を埋めに来て厚かましい…。
お父さんに言いつけるぞよ。
よしやよ〱
あれえ、おかみさん、権七がいっそ
悪いことしてどうにもなりませんよ。
男
コレサ〱お菊さま。
お前の真っ白な体にうっすりと生えたと
ころをちょびと見ましたら、もう気を失
いそうでござります。
どうぞ、たった一つ、ちょこちょこと権
七にお慈悲を下さりませ。
拝みます〱。
お年寄
女
ご隠居さんえ。わたしは若い男よりお年寄
の方がかわゆうござります。
早く囲い者になされて下さりませ。
男
年寄がいいとはちっと嘘らしいが、嘘にも
かわいいとはうれしい文句だ…。
おれも、この年月貯めた奥蔵の金を手前ゆ
えならみんな無くしても惜しくねえ…。
もういくだ。それ〱〱。
婦美好図理
人(つるみ)と犬
掛軸
可愛との 君がこと葉の 初ものに
のばしてみた 明六(あけろく)の鐘
女
幸八郎さま、今宵は夜の明けるまで抜か
ずに入れつづけにして下さりませ。
鳥が啼こうが雀が起きようが、天道(てん
とう)さまが出ぬうちゃ抜かしやせぬ。
犬
人間のつるむは、けしからず鼻息の荒い
ものだ。
それを見てはこたえられぬ。
おれも始めなきゃなるまい。
エエじれってえことだのう。
わん〱〱
喜多川歌麿(婦美好図理「穴」)
「婦美好図理」の序文の作者・亀陵山人
こと喜多川歌麿の艶序文である。
序
天地開闢(かいびゃく)以来、人の心を
快くする穴は牝の穴と豚のそれである。
ただし、牝の穴は穴の上品なるもので、
豚のそれは穴の下品なるものである。
貴い雲上人の白のへのこから卑しい田舎
の毛深い奥へのこにいたるまで常に牝の
穴を好まないものはない。
家を継ぎ国を固めるのも、またこの穴の
ためで、家を失い、国を亡ぼすのもまた
この穴である。
ああ、世の好き人、あな尊きこの穴をも
って、豚の下品なると等しくするなかれ。
寛政末の歳
亀陵山人題す
2023.9.27
2023.9.29
2023.9.29
Enjoy Life「草木花(夢)」ー男と女の物語(476)
2023.9.30