猛暑の中なか紀州橋本にゆく。

各地で黄金色の稲穂が収穫され、神様に

感謝の秋祭がおこなわれている。

土産にもらった寿司は笹で包まれていた。

ふと笹にまつわる男と女の物語をを重ね

ていた。

 

「らんまん」(笹)

「らんまん」(NHK連続テレビ小説)で

竹雄(志尊淳)は自分の好きな道を歩ん

きた万太郎(神木隆之介)に、「お前は

金の道ゆく」といっていた。

 

鮭寿司を二重に包んだ笹は寿司の菌を殺し、

食べ物が腐りにくなり保存する性質がある

という。

竹と笹は似ているが、大きさで竹は長く笹

は1m程だが、葉もよくみると違っている。

竹は縦と横に葉脈があり、笹寿司の笹の葉

を見ると、縦に並行の葉脈があり、その中

央には1本金色の葉脈があった。

 

 

金色と日本

さらにその笹寿司が入った紙箱を見ると、

金色の笹の葉がデザインされていた。

ヨーロッパでは日本を「黄金の国ジパング」

と呼んでき、また仏教では金色(こんじき)

と呼び、富と権力を象徴する色となってい

た。

 

 

 

竹と笹(花言葉・艶噺

よく似ている竹と笹。

その竹と笹にもいろいろな種類があり、そ

れぞれが個性をもつ。

ところで、竹と笹の花言葉は、竹には節が

あり「節度」、笹は竹よりも小さいことか

ら「ささやかな幸せ」。

竹と笹にまつわる艶噺は多い。

その内の二つ、竹の『すずめ開(かい)』

と笹の『曲水宴』。

 

すずめ開(かい)

江戸時代に江戸で生まれた浮世絵枕絵(春

画)の創始者鈴木春信の作品がもとになっ

ているが、これを描いた挿絵画家などは、

不詳。ちなみに色の道の「すずめ開」は、

貝をつび(開)に懸けて世人を愉しませて

くれている。

 

すずめ開(かい)

情(なさけ)知る 竹にとなりの

すずめ開 うれしきめにも 

あひにけるかな

 

 

雀は竹にしなよくとまる。

人はとまらぬ色の道だが。

騒がしいとき情合(いろ)はどうしたもので

あろうか。

そういう情合(いろ)であるからこそ

うれしく喜ばしいもである。

 

曲水宴

江戸時代の絵師・竹原春朝斎は『新童児往来

万世宝鏡』(黒摺大本・一冊・安永5年177

6)に公家の世界を描いており、テーマは、

曲水宴(旧歴弥生3月3日)。

竹原春朝斎の絵には詞書があり、これが愉しい。

画面には、小川の傍に公家と姫の男女のふた

りがおり、頭上の樹には桃の花が咲いている。

川上では稚児とその後ろにも公家がいる。

 

 

 

 

(公家)

きょくすい(曲水)とは 曲どりのすいごと

(粋事)をするかくしことば けふはいろい

ろにしてたのしむぞ

(姫)

ささ(笹)をたんと召しあがったゆえ いつ

もよりおおきうなり、自らもいたづらな気(

ぎ)になりました

(公家)

アレ川上ではやくも曲どりしているのは若衆

好きの好岡中将とみえる

(姫)

よその楽しみをみるにつけ猶(なほ)いやま

しい気がうきうきとしてまいります早ようは

じめなさらぬかいな

(公家)

どれどれ雛(ひな)の女夫事(めうごと)を

はじめようか 是(これ)はや細い谷間がじ

くじくとしてきた 丸木橋をわたしてやろう

(姫)

誰がはじめてこのようにおさしになったので

しょうか 早うなされいなア

(公家)

公家のゆるゆるびんぼう(貧乏)ということ

もゆるゆると雛の開(ぼぼ)をするという

たとえそれよいか よいか

(姫)

ハイ ようござります ようござります

アヽ アヽ アヽ

(好岡中将)

雁高(かりだか)の大納言実好卿もあの通り

じゃ

曲水宴では、大納言実好(さねよし)卿と姫

のふたり、そしてその川上では稚児と好岡(

すきおか)中将が織りなす男と女の宴がつづ

いていく。

 

「らんまん」(スエコザサ)

牧野富太郎と寿衛をモデルにした「らんまん」

最終週の題は「スエコザサ」(予想)。

牧野富太郎は笹の新種に「スエコザサ」の名

を付け、牧野富太郎の墓には、富太郎の俳句が

二句刻まれている。

家守りし、妻の恵みや わが学び

世の中 あらん限りや スエコ笹

 

 

 

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