国や地域によって文化の違いを

感じる。

男と女の関係は、時代によって

かなり違う。

大河ドラマ「鎌倉殿13人」を見

ていて、ふと想い浮かべたのが、

「弁慶と小町は…」と描かれた、

北斎の娘が描いた一枚の絵だった。

 

 

 

葛飾応為「応為(画号)」

葛飾応為は、葛飾北斎の娘で、名

を阿栄(おえい)という。

応為は画号で、かの女のことを葛

飾応為と呼んでいる。

この応為は、「おーい おやじ殿」

という俗謡の一節からとったとい

う。

父の北斎は、当初は勝川春朗と名

乗り、その後は葛飾北斎、画狂卍

などと画号、画名を幾度も変えて

いる。

 

「つひの雛形」と「栄(落款)」

葛飾応為が描いた絵本に「つひの

雛形」がある。

この冊子の表紙に「紫色鴈高作 女

性隠水書 陰陽和合玉門栄」とある。

 

絵本「つひの雛形」の第3図にある

の屏風の絵の左端には、小文字で

(紫色鴈高書)と隠し落款がある。

 

屏風の、この絵本の作者は「つひ

の雛形」(第3図)にあるように、

紫色鴈高(ししきがんこう)こと栄、

つまり北斎の娘・お栄の作品である。

と、わかる。

 

(第3図)

 

 

北斎の娘・葛飾応為の「つひの雛形」(第3図)

 

北斎の春画「富久寿楚宇」とお栄

北斎の春画には「浜千鳥」(墨摺手

彩色12枚組物)がある。

「浜千鳥」の絵には書き入れがない

が、「浜千鳥」の原本となった春画

「富久寿楚宇」には北斎の書き入れ

がある。

絵もさることながら、この書き入れ

が愉しい。

 

北斎の「富久寿楚宇」(第9図)

 

 

(人妻)

今夜は亭主が留守だから、もうも

う嬉しくって嬉しくてならない。

こんな落ち着いてできる晩はねえ

から、へのこを抜かずに 十分満

足させておくれ。

フンフン ハアハア言いと言って

ハもう もう もう、さうさ さ

うさ スウスウ

(間男)

今夜は宿六は留守だから、お前も

俺も十分満足せにゃ ならねえ。

フンフン、さうよがられると、

俺も我慢できねえ。

一緒にいくず。

ハアハア スウスウ

 

お栄と吉原遊郭

北斎の娘・葛飾応為こと栄。

お栄の作品に「吉原格子先之図」が

ある。

 

 

江戸吉原の路上から入り口のいつみ

屋の顔見世の風景。

右側角の大きな提灯に「応為」、お

して左側に大人(女性)がもつ提灯

の端上「栄」と、それぞれの文字が

提灯端にすわずか入っている。

 

江戸の春画(北斎と喜多川歌麿)

較べてみると、それぞれの絵の特徴

を知り得る。

歌麿の春画は、江戸の通人たちの洒

落っ気を軽やかに巧みに表現してい

る。

北斎には、その気取りを払うかのよ

うに、江戸っ子が性の愉しみを、下

町っ子らしく直截に表現している。

 

北斎の娘・お栄の絵本(春画)

北斎の娘・葛飾応為は美人画に優れ

ており、北斎の春画の彩色を担当し

ていた。

その北斎は、「美人画にかけては応

為にはかなわい」という。

そのひとつ、お栄の「月下砧打ち美

人図」。

 

 

お栄の「月下砧打ち美人図」

 

葛飾応為の春画「つひの雛形」

北斎の娘の応為が描く「絵本つひ

の雛形(ひながた)」。

題の「つひ」は、男女のつがいと

女陰の「つび」との掛けたことば

で、直訳すると「女陰の見本帖」。

応為は、さまざまな男と女がおり

なすいとなみを絵本「つひの雛形

」に描く。(全12図)

 

「鎌倉殿」を見て、ふと頭に絵本

の中のその内の1枚の絵を浮かべた。

 

 

想い浮かんだ絵。

男女がからだを触れあい、たがい

に頂きにのぼりつめる。

その後のふたりが描かれているが。

男の腕に頭をのせ、下はそのまま

で、右手には男のものをしかと握

り、ゆめごこちでいる…。

絵のなかの胸元にある団扇(うち

わ)に、「弁慶と小町は馬鹿だ」

と揶揄し、こんな愉しいことを、

弁慶と小町はエンジョイしなかっ

たのかと、夢心地でいるふたり。

 

北斎の娘・栄

北斎の娘・お栄(応為)は、北斎

の三女で生没年不詳。

お栄は晩年に北斎と暮らす。この

頃に、北斎の弟子・露木為一が北

斎親子を描いている。

北斎は、秋から冬、一日中炬燵に

入り、お栄は、その横で絵を描く。

 

 

お栄と北斎(北斎仮宅之図・国立国会図書館蔵)

 

 

国によって歴史や文化が違うよう

に、男女の関係も時代によって京

と鎌倉、京と江戸、さらに地域に

よって違い、変わらないでいたり

する。

「鎌倉殿13人」の頃のドラマを

見てふと思った。応為の一枚の絵。

この絵の奥は深く、枕元でふたり

の様子をずっと見ていたのか子ね

こがいる。

そしてあらわにした姿の腰あたり

で、ネズミが交尾している。

浮世絵春画の女性は、北斎の娘・

応為の絵をはじめ、いつも男より

積極的で、エンジョイライフだ。

 

 

 

2022.2.28

鎌倉殿8回感想「何とか」と艶噺(煩悩即菩提)ー男と女の物語(229)