悲しみはいつきえる

  ゆうこ12 

娘とコロ

もう何年前になるだろう。

私の家の近くの酒屋さん所のコロという犬が死んだ時のお話です。

侑子がなくなって法事のお酒を近くの酒屋さんが配達してくれる。

そんな、ある日の事、酒屋さんのご主人から聞いたお話です。

内のコロは変わった犬で、、と、お話が始まる。

飼い主のお話では大変人見知りをする犬だったようです。

人には近寄らない性格の犬、酒屋だから人のでは入りは多いので中にはコロにおいで、おいでとかしても知らん振りコンクリートの床にべっとりと腹ばいに座ったまま愛想の一つもしない犬でした。

そんな犬が亡くなった内の娘とは大の仲良しだったとか。

毎日学校に行くのにそこの家の前を通ります。

           

           12-1コロとじゃれ合う

内からは子供の足では10分ぐらいかかるでしょうか。

大人の私でしたら5分もかからないぐらいです。

娘は犬が嫌いなのですよ、と言うのは2歳ぐらいのときお菓子を持って遊んでいたら放し飼いの大型犬が恐がる娘に近寄ってきて持っているお菓子を手から奪ってしまいました。

まだ持っている娘のお菓子を狙っています。

必死にお菓子を取られまいと両腕をあげてすくんでいる娘。

急に泣き出したので気が付いたのですが。

そんなことで娘は犬嫌いになりました。

そんな娘と酒屋の犬がなで仲良しになったのかは酒屋さんも不思議がっていました。

毎日、娘が酒屋さんの前を通る時間になるとちゃんと酒屋の前に出て待っている娘が来ると尻尾を振ってニコニコ愛想をして喜んでいるとか。

        12-2帰りを待つ

娘もそれに答えて行く。

学校の帰りは帰りでちゃんと犬がお迎えのごとく娘が来るのを待っているとか。

そして見えるとじゃれ付き4つの足を上にして娘に腹を見せてなぜなぜしてもらっているとかも。

娘も帰りだから時間があるのでコロと遊んで帰るのです。

そんなふれあいが毎日のようでした、そんな或る日の夏のことでした私が家の中から庭を見ていたら1匹の犬が家の庭先に来て立ち止まり立ったままじっとこちらの様子を伺っています。

あれ!あの犬は酒屋さんの犬ではないかと私は気が付きました。

なんでここにと思いました。

私は娘が最近コロと会ってないのでここまで会いに来たのかと思っていました。

          12-3腹上にして

その頃の娘は病気療養中で徳島医大に入院中でしたのでコロは何か月も娘と会ってないのです。

そして月日は流れて翌年の平成元年1月11日娘は帰らぬ人となってしまいました。

法要のためのお酒などを持ってきてくれる酒屋のご主人に最近コロが見えないけどと、聞くと。

コロは昨年の夏、弱って8月の中頃なくなりましたと言ったのです。

私はその言葉にドッキとしました。

8月の中頃といえばコロが家に来たころです。

そうか、その時の犬の様子はなんか弱弱しかった、なんか元気がない様に思えた。

私と目が合ってしばらく立ち止まっていたが引き返した。

その時の歩き方がおかしく、ヨタヨタと歩いていた。

           12-4腹ばい

そうなんだ、コロは自分の死を覚って最後の力を振り絞って娘に会いに来たのだと思いました。

娘と会えなくなったコロは、あのいつものお姉ちゃんは、元気なんだろうかとお別れに来たのでしょう。

心配して何回も会いに内に来ていたと思いますその日は、たまたま私の目に留まったのだと思いますよ。

娘が亡くなったのはその翌年の1月でした。

そう言えば、病気療養中外泊した時に私の運転で妻と侑子が車で酒屋さんの前を通ったとき侑子がコロを見つけ、コロがいると言ったので低速走行一旦止まり手を振ると。

嬉しそうにコロはしっぽを振り愛想よくしていたことを思い出している。

         12-5家に来たコロ