314.なんか変だ
ツアータイトルにもなっているアルバム"惑星"に収録されている鋭い歌詞と、ダイナミックにバンドサウンドがたまらないロックナンバー。
オリジナルバージョンで感じられる各パートが緻密に絡み合って作り上げられるサウンドだったのとは対照的に、ライブバージョンでは楽パートが"個"の部分を存分に発揮し、音と音とがぶつかり合う、競い合うようなより一層にアグレッシブなサウンドに仕上げている辺り、改めて聴いてみるとライブはその場、演奏される環境、アーティストの精神面も含めた状況によって変化する"生物"だという部分を感じさせられる。
またこういったライブサウンドを耳にすると、玉置さん、安全地帯も含めてライブツアーのファイナルを作品にするという事がライブ作品ですが、最終章のサウンドが、そのツアーでアーティストがオーディエンスに聴かせてみたかった音、作品として残しておきたかった音だという事が音として実感させられる。
そういった意味から、ライブ作品とは何ぞやという問いへのアンサー的なライブバージョンとも言えるかも知れませんね。
資料1.ダイナミックに、時にはじっくりとしたサウンドでオリジナルアルバムとは違う魅力のライブ作品。サウンドの完成形、ツアーファイナルの様子が捉えられる事が多い。
19.眠れない隣人
'84年リリースの安全地帯の2ndアルバム"安全地帯II"に収録の、安全地帯らしい、安全地帯でしか表現できない緻密さ大胆さ、疾走感を感じさせるアップテンポなナンバー。
'80年代の雰囲気、空気感を感じるオリジナルバージョンから、20年以上の時を経過した時点での演奏という事もあり、緻密さよりも大胆さに比重を置いて曲の持つ疾走感に重点をおいたような演奏が印象に残る。
オリジナルバージョンの跳ねるような感覚のビートから、ずしりと腰を据えたような感覚のビートながら、疾走感を感じさせられる辺りのバンドとしてのアンサンブルには、思わず唸ってしまう。
オリジナルバージョンに忠実ながら、時にはより繊細に、時にはよりダイナミックに演奏されてきた感のある"眠れない隣人"ですが、’07年のライブバージョンは、無駄な贅肉を擦り落としたようなスリムでシャープに変貌を遂げた"眠れない隣人"のように感じさせられ、新鮮に響くライブバージョンだとも思います。
資料2.'87年の安全地帯のツアーでは"眠れない隣人"はメドレー形式で演奏されました。
105.じれったい
’87年4月にシングル盤としてリリースされた、大胆なディスコサウンドの導入で、安全地帯として新境地開拓的なナンバーとして代表的な作品として人気の高いファンキーなナンバー。
ライブにリメイクとさまざまなバージョンが存在する"じれったい"ですが、'07年のツアーでは、オリジナルバージョンとは違うロカビリー的なサウンドアプローチで"じれったい"を違う角度からアプローチしていて、また楽曲の新たな魅力を感じさせる工夫がされている辺りが印象に残りました。
一見オリジナルバージョンとの接点という部分ではなかなか掴みきれないロカビリーテイストの"じれったい"ですが、立体的に曲を聴いてみると、オリジナルバージョン同様に、分厚く迫り来るようなゾクゾクさせられるベースラインなど、楽曲そのもの土台はしっかりとしていてこそのパフォーマンスだと再認識させられる。
曲の土台、骨幹的な部分はいかに楽曲として大事な重要な部分かという点を確認させられるライブバージョンだとも思います。
資料3.'97年の"JUNK LAND"ツアーを捉えた映像作品でも、ロカビリーテイストに変貌を遂げた"じれったい"の躍動感あるパフォーマンスを楽しむことができます。
59.夏の終りのハーモニー
'86年8月に開催された井上陽水さんとのジョイントコンサート"スターダスト・ランデヴー"の最後の曲として初披露され、9月にシングル盤としてリリースされた後は、多く人々に歌われ、愛され続けるスケールの大きなスタンダードナンバー。
曲の持つオリジナリティは保ちつつ、オーディエンスがワンコーラスを歌う場面や、アコースティック色をやや強めの身近に感じるサウンドづくり、空気感づくりが聴くに辺りポイントの一つだと言えると思います。
人気の高いナンバーという事もあり、リリース後のライブでは、ほぼ毎年セットリストに加えられ、ある程度ライブに足を運ばれた方々にとっては、馴染み深く、けど何度も聴いてみたい定番ナンバーとして捉えられている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
近年の玉置さんの年間を通しての活動パターンとして、春先から初夏にかけてオーケストラ編成のツアー、盛夏から晩秋にかけて小規模なアコースティック編成のツアーを敢行するパターンが定着していて"夏の終りのハーモニー"はどちらかというと曲の持つ雰囲気を考慮してか、オーケストラ編成でのツアーのセットリストに比重を置いているように感じますが、久しぶりにアコースティック編成の身近に感じられる故郷BANDのライブも聴いてみたいと思わせるライブバージョンだとも思います。
資料4.身近に感じられる、アコースティック編成での"夏の終りのハーモニー"を演奏する’07年ツアーより。
194.田園
もはや説明不用の’96年リリースのミリオンナンバー。ライブの終盤で必ず演奏される定番ナンバー。
この曲の不思議な魅力という点で、いつもセットリストに加わるばかりか、決まってライブの終盤に演奏といった変わり映えしないパターンでの演奏が多い"田園"
普通なら安定のワンパターン的になってもおかしくないナンバーだと思うのですが、この"田園"は聴けば聴くほど曲の持つ不思議なパワーを感じられ、全く何度聴いても、何度観ても、何度歌っても色褪せない魅力を備えているナンバーだと、3年続けてライブアルバムに、それもよく似たステージ終盤での登場という部分で、鮮明に感じさせられるライブバージョンだと思います。
"田園"の持つ、曲の不思議なパワーを感じながら聴いてみたいライブバージョンだとも言えるかも知れません。
資料5.リリース以降、さまざまな場面で曲の持つ不思議なパワーを発揮してきた"田園" その中でもコロナ禍で沈んた閉塞感に包まれた'20年の紅白歌合戦ではパフォーマンスは後世に伝わる名場面だったと思います。
171.元気な町
'93リリースのアルバム"カリント工場の煙突の上に"からリードシングルとしとリリースされたアコースティックサウンドを主体にした放牧的なサウンドに、なんとなく懐かしく温かみあるリリックが印象的なナンバー。
シングルとしてリリースされた"元気な町"ですが、決して"田園"や"メロディー"のように定番ナンバーではなく、ややジョーカー的なナンバーという印象もあったためか、ツアーのラストナンバーとして抜擢は、ある意味サプライズ的にも感じられ、本来アンコールはこういうサプライズ的要素があってこそのアンコールだという一面を再認識させられる。
またこのステージがバンドとして最後のパフォーマンスになるという事もあってか、シンプルなギターメインのサウンドでありながら、バンドが一帯となって迫ってくるようなアンサンブルも印象的。
資料6.このツアーをもって、最後になったサポートメンバーと共にオフの様子を捉えた一場面。個性豊かなメンバーでしたが、バンドとして一帯となったアンサンブルは忘れる事ができない。
いろいろと聴きどころの多い"元気な町"ですが、その中でも注目して聴きたいのは、やはり玉置さんのボーカルだろう。
何度も記載させて頂いておりますが、このツアーを最後に一旦、全ての活動を療養の為に停止する事になった最後のステージでのラストナンバーという事もあり、全てを出し切る、これで最後のパフォーマンスになっても構わないと感じさせられる"入魂"のパフォーマンスは、JPOP史に残るパフォーマンスだと個人的に感じます。その辺りも注目しながら聴いて頂きたいライブバージョンだとも思います。
資料7.ツアーラストの最後の"元気な町"のパフォーマンスはまさに"一曲入魂"のパフォーマンスだったと言えるのではないかと思います。
317.〜Ending〜
'10年代半ばから、もはや定番化した感のある春からのスタートするシンフォニックコンサート"ビルボード・クラシックス"と夏からスタートする小規模なバンド編成の"故郷楽団"もしくは"故郷バンド"ツアーですが、近年のライブでは安全地帯も含めて、オープニングSEを用いて、ステージにメリハリを付けてショーそのものをグレードアップする演出の玉置さんのライブ。
今から振り返ってみると、そういった仕掛けが本格化していったのが、この'07年のツアー辺りだったのではないかと思います。
またステージそのもののコンセプトのようなものも、オープニングとエンディングにSEを用いる事によって、ぼんやりですが掴み取りやすくなったようにも感じます。
ショーを全体的に聴いてみるという点においては必要不可欠なエンディングと捉えて最後まで聴いてみたいエンディングSEだとも思います。