島根県の津和野は、昭和40年代に国鉄のディスカバージャパンのキャンペーンや女性誌「anan」「non-no」の旅行特集で取り上げられ、小京都という表現が使われ出した頃に絶大なる人気を博した、元祖女子旅先の町である。

駅を起点に、昔の町割が残り造り酒屋や商家の町家が並ぶ本町通り、鯉が泳ぐ水路が配され津和野カトリック教会や町役場の建物や家老門などが並ぶ官庁街の殿町通りが、主な見どころ。津和野川を渡った先には森鴎外と西周の草庵のような旧居が、田園の中に建ち風情がある。

今回はこれに加えて「山攻め」を行い、斜面に連なる千本鳥居のトンネルの坂道を登り詣でる太皷谷稲荷神社から、山城の津和野城跡へ。リフトで上へ行ってしまえば平らな尾根道、との昔の記憶は大間違いで、ゆるく登って眺望の良い出丸跡へ出てから、リフトは何だったんだと思うほどグッと下り、その分プラスアルファの山腹の大登りで本丸へと至る。

本丸の手前はかなり道が荒れていて、転がる岩や木の根道をなんとか登り、天守台がある本丸から一段上の三十間台へ。名の通りかなり広い曲輪で、眼下には津和野川沿いの狭い盆地と、密集する石州瓦の街並みを広く見下ろせた。まさに、領内を見渡せる山城である。

町並みは本町通りと殿町通りのほか、森鴎外記念館の帰りに通った中心街の大橋通りが雰囲気がよく、殿町と同様に沿道に水路があるが生活感がある。津和野川を越えるとそのまま高岡通りになり、こちらはレトロな旅館やみやげ店、ローカルな食事処が並び昔の観光地らしい趣も。大通りのほか魚屋が並んでいた魚町通り、酒蔵の白壁が続く横町通り、踏切へ続く今市通りなどの、小道がまた風情がある。

また鯉は水路のほか、大昔は知られていない穴場だった吉永米店の庭の池を再訪。今は結構有名な鯉スポットになり、当時は水が見えないぐらい密集しめいた鯉がやや減った、と店の人。結構最近までプラッシーを売っていたそうだが、生産終了で終売となったのが残念。

猛暑の中ながら要所は抑えられ、まずまずの昭和な小京都さんぽでした。