ローカルアーケードのジョイフルたまちを、伝建地区から駅側に抜けたところにある洋食レストラン。観光客の動線から外れている、完全に地元客向けの食堂で、すすけたサンプルはスパゲティにハンバーグにピラフにフライに、なぜかちゃんぽんといった定番の洋食メニューが並ぶ。

サンプル並みにすすけた店内は割と広く、昼時に訪れたら家族連れを中心とした地元客で、びっしりと埋まっている。家族経営らしく厨房ではおかみさんをはじめとした料理人、フロアでは接客担当のお姉さんが、それこそ店がひっくり返らんかの勢いで大わらわで接客。活気があるというよりも、客への対応に全く追いついていないバタバタさが、遠巻きに見ていてちょっと面白い。

オペレーションもグダグダなようで、自分より後に入った三組の客の分の後に、料理がようやく登場。名前そのままの、チキンカツにホワイトソースがかかっており、ラードの香りが甘く香ばしい洋食屋らしい揚げ物の衣に、身が締まった肉の旨み、それを包むソースはタルタルやマヨほど自己主張しないので、揚げ物の味の下支えになっている。たっぷりの野菜サラダに、小皿のかまぼことだし巻き玉子もおいしく、本格的洋食なようで家庭料理っぽいところがあるのも、なかなか親しみやすい。

特筆するほどの美味さかと問われたら、正直言葉に詰まるのだが、強烈にローカルな店構えと雰囲気の中に、身を置くのが妙に心地よい。行儀の良い見どころが多い城下町の小京都をめぐり終え、ほっと一息つけて地元になじめるような、萩のご当地洋食屋である。