市街の南側は田園地帯で、歩いていると沿道には溜池が目立つ。大和郡山は水利がよく古くから農業用水用の溜池が豊富で、これを用いた金魚の養殖が町の地場産業となっている。起源は柳沢吉里が、甲府から国替えでここの藩主となる際に持ち込んだもので、幕末から明治期に職を失った藩士の内職、農家の副業として定着。現在は養殖業者が60戸、年間の販売数は7000万匹ほどで、品評会や関連イベントも数多く行われ、金魚の町であることを打ち出している。

新木山古墳から左右に溜池と養殖業者の生簀や小屋を見て、溜池沿いに回り込み用水路沿いを行くと、養殖池が並ぶまん中に「金魚のふるさと郡山金魚資料館」がある。養殖業者のやまと錦魚園の施設で、養殖の歴史や道具や美術骨董品を並べた展示小屋の奥にある、品種別に水槽を並べた金魚水族館が見ものだ。実は中国原産の和金、明治期の養殖家の秋山吉五郎が作った朱文金、沖縄を経て渡来した琉金、金魚の王様と呼ばれる高価なランチュウなど、耳にしたことがある種がひととおり観察できる。

隣接する業務用の養殖池も一部が見学でき、品種ごとにずらりと並ぶ生簀を間近に見て回ることも。朱に白に黒の色や柄、スリムなのやずんぐりしたのなどスタイル、ヒレが華やかなのや出目なのなど形状が、それぞれまとめて見比べられるのが生産地ならではだ。注文に合わせた種をすくいあげたり、出荷用に網でまとめてすくってビニール袋にまとめる様子など、地場産業らしい風景も見られるのが楽しい。小売もやっていて値段表も出ているので、お土産にもおすすめである。

再び池の中の畦道を歩き、踏切を渡れば駅も近い。老舗の和菓子どころや飲食店街、線路端の飲み屋長屋を見ながら歩けば、近鉄郡山駅へ到着。お疲れ様でした。