
奥久慈軍鶏、あんこう、光圀ゆかりの黄門料理など、県産食材を使用した地産地消をモットーとした料理屋。名の通り鬼平犯科帳に所以があり、奥久慈シャモの料理が多彩だ。肉質がグッとしまっており、かむほどに滲み出る野趣あふれる旨み。八溝山系の風土と那珂川の水が育んだ、自然の賜物な味である。
細い通路に沿って小座敷が並び、その一つに落ち着く。奥久慈軍鶏の親子丼をメインとしたセットがあり、串焼きなどもつくのでそれに。突出はあじ南蛮、くるみクリームチーズ、バイ貝、たたみイワシ。くるみクリームチーズがデザートのように甘く、酒に合いそう。ゆば刺しはまわりくっきり、中はとろりと甘い。
奥久慈軍鶏の串焼きは、ももねぎ、ささみ、砂肝の3本。味は塩だけで、引き締まり無駄な肉汁はなく肉本来の澄んだ味が楽しめる。噛んだ相応の弾力で、ササミは究極の淡白。まさにアスリートの肉だ。追加で頼んだ奥久慈軍鶏の唐揚げも堅く、グイグイ押し返してくる。
メインの親子丼は、そんな質実剛健な肉に、トロトロ濃厚な卵が相性抜群。一般的なホッと優しい味と対照な、肉料理たる荒々しさがあり、命をいただいているのを実感する活きを感じる丼だろう。
山桃桜と書いて「ゆすら」と読む、笠間須藤本家の酒は、切れ味鋭く引きの苦味が玄人好み。肉も酒も、茨城の野と里の恵みあふれる品々が揃う、水戸の粋な店である。