変わりラーメンの方向性として、乳製品を加えるというのを、旅先で見かけることがある。バターはもちろん、チーズや牛乳がそれで、発酵系やタンパク質系の味噌や醤油との相性がいいのだろう。とはいえひとつ間違えばゲテモノになりかねない、絶妙なバランスの上に成り立つ旨さ。素材を冠したネーミングのインパクトと、食べたみたら意外とアリだったとの感想のギャップが、味の良さをより演出している面もあるだろう。

会津若松の「会津牛乳ラーメン」は、市役所そばの「くるくる軒」の人気メニューだ。1982年創業の典型的な街中華で、麺類や定食や丼ものといったありきたりなメニューが常連に浸透する中、このとんがった品も思いの外定着しているのが、注文して待っている際の来客のオーダーからも分かる。会津地鶏あんかけラーメンという、これまた観光ラーメンに陥りかねない品ですら、地元で普段使いされるのは、ある意味料理人の技量の賜物ともいえるのではなかろうか。

出されたラーメンは見た目は濃厚とんこつのような白いスープだが、レンゲがズブっといく粘度は例の店のこってりを思わせる。スープからいただくと塩味が効いたポタージュといった感じで、牛乳っぽさはなくさっぱりといける。麺にスープがごってりと絡むため、引き上げづらいがスープがより堪能できるのも嬉しい。具はコーン、キャベツ、タケノコと、どれも乳製品にも塩味にも合う取り揃えで、さっぱりいただけてしまう。スープに油がまったく浮いてないのも特徴で、安心して飲み干せるのもまたいい。

牛乳は地元会津産をつかっているそうだから、これはれっきとしたローカル麺料理。いわばミルク系塩ラーメン、会津ポタージュで、ラーメンではなくヌードルといったほうが似つかわしい。市内で牛乳を使ったラーメンを提供する店は6軒あるそうで、連携しての定着も期待できそうだ。