大町四ツ角まで戻り煉瓦造りのカフェ「大正館」を先へ行くと、鈴木屋利兵衛の蔵造りの堂々たる店舗に白の暖簾が揺れる。天保年間創業の会津塗の老舗で、店内には戊申戦争時の刀傷が残っているというから、会津の歴史の生き証人的な店である。

会津塗は武士の町で寺が多いことから、武具や仏具、装飾品に用いられたのが始まり。1590年に蒲生氏が領主になった際に、出身の近江から木地師や塗師を呼び寄せたことで、さらに盛んになった。江戸期に入ると保科氏に保護されるようになり、京都から蒔絵師を招聘したりして装飾技法が発達し。各大名が木地師や塗師を呼び寄せ、城下に住ませることで、技術も向上していった。

絵柄の中でも特徴的な「会津絵」は、絵模様や金箔が施された華やかな技法。松竹梅に破魔矢を描くのが特徴で、戊申戦争後にとだえた技術を、6代目鈴木幹子さんが資料を集め、極力昔の形に復活させた。ほか朱や金粉で網模様を描く「網絵」、朱の漆を下地に塗りみがき出す「朱磨き」、塗が乾く前にもみがらをまぶし、乾いて外したところに銀粉を撒いて磨く「金虫喰塗」、漆を何重にも厚く塗り、磨いて模様を出す「乾漆」などが、代表的な技法である。この店では、漆もなるべく地場産を手配しているという。

会津絵はすべて手作業で塗っており、刷毛目をあえて残した技法もある。金虫喰はペイズリーのような模様が特徴的で、小柄な盆でも2万円ぐらいと高価。乾漆はもともと塗り職人が仕事の後、自分の道具の手入れに漆を塗り重ねたのが起源で、漆が厚いため丈夫になるという。布を敷いて漆で塗り込む「布目」という技法では、布の独特の模様が出る。乾漆と布目は使い込むと表面の漆がはげ、下の色が出てきて模様が変わるのもまた、味わい深い。

これらの技法で手頃な品では、ぐい飲みが会津絵、乾漆、布目それぞれあり3500~5000円。今日のところは、漆塗の玉を装飾にしたチョーカー1650円をおみやげに。黒と赤の玉が、漆を生かした光沢が美しい。では大町通りの老舗を、もう少し訪ねてみましょう。