三国街道の先の今の幹線道路・県道370号線沿いにも醸造蔵が点在する。手作り味噌の「星六」は、明治30年星野本店から分家した味噌蔵。蔵は当時移築されたもので、今も現役だ。国内産の原料で無農薬無添加、手作りの製法を守るこだわりの味噌蔵である。

「機那サフラン酒本舗」には極彩色のこて絵をあしらった「鏝絵蔵」が目を引く。明治から昭和にかけ、サフランを用いた薬用酒が大人気となり、富豪となった豪商・吉澤仁太郎氏が財を投じて装飾した鮮やかな絵だ。地元の左官河上伊吉によるもので、正面に龍、鳳凰、麒麟、玄武、右側と左側2階部分に干支の動物があしらわれている。ただしサルは「去る」で、商人にとって縁起が悪いのでないのだとか。1枚の重さ500キロある分厚い扉には、恵比寿様と大黒様も。まさに蔵元の思うまま、遊び心満載のアートな蔵である。

蔵の内部の2階は資料館になっており、当時の宣伝ポスターはご当地歌手の三波春夫を起用。また昔は女性は酒を飲む習慣がなかったのを「薬用」として広めたチラシも見られる。古い書籍や雑誌のコレクションも豊富で、所蔵はこの数倍あるのだとか。

蔵の見学後は、サフラン酒を試飲。サフランほかはちみつ、桂皮、丁子、甘草など20種類以上の植物などを調合した薬用酒で、ひと頃は養命酒と人気を二分する健康酒だったとも。サフランから出した薄黄色の酒は、熟成させた果実酒のような角がとれた甘さがする。芯から熱を帯び、いかにも体に良さそうだ。

では先ほどの、吉乃川の資料館も覗いてみましょう。