庚申堂の際には町家を使った店舗が並び、茶粥がいただける茶房暖暖は松山家住宅を活用、豆腐づくしランチの近藤も千本格子が美しい築180年の建物だ。いずれも店頭の並びに段差があり、通りがまっすぐでなくガタガタしている。突き当たりの「スルスル」は鯛の出しでいただく三輪素麺の店で、ここを右に折れると緩やかに下っていく。途中、市の保存樹になっている高さ10mのイチョウを見上げ、聖光寺の白壁沿いにくだると、門前で「番犬」がお昼寝中だ。

奈良市音声館のところで下御堂商店街から続く通りに突き当たり、左右を見るとどちらも登り坂と、ちょうど谷底に出た感じである。左へ上り切った徳融寺もかつて元興寺の子院で、奈良町では極楽堂に次ぐ境内の広さである。禅道場であるのを示す「不許韮酒入門内」の石柱を門前に見て気を引き締め、境内へ。本堂は縁台に座れ、庭が広々しているので一休みにもってこいである。

また境内には地元の名士・吉村長慶氏ゆかりの石造物がいくつか見られる、ご本人のユニークな像のほかに、キリストと釈迦を氏が間に入り、寝てる場合じゃない、世の中をなんとかしてくれと揺り起こすという奇抜な石碑も。ある意味、今の時代にあっているかも。

奈良町の南端まで来たので、このあたりから引き返しましょう。