本町筋から今井まちや館の先を南へ折れると、白壁に挟まれた小路の先に入母屋づくりの櫓が見える。浄土真宗本願寺派、大和五ヶ所御坊のひとつに数えられる、称念寺の太鼓楼である。創建は織田信長の治世の頃、本願寺の一家衆だった今井兵部卿豊寿が構えた道場が起源で、今井町の町名の由来もこの今井兵部による。住職は代々、今井家が務めており、今井町はこの称念寺の寺内町として発展してきた歴史がある。

太鼓楼の右に表門があり、くぐった正面に庫裏と客殿、右手に大規模な入母屋本瓦葺の本堂が控える。表門の横には、明治10年に天皇の畝傍御陵行幸のとき行在所になったことを記す石柱も立ち、その格式を窺わせる。筋向かいには中橋家、その先には明治創業の醤油蔵・恒岡醤油の店舗も。店頭にも見られる、吉野杉の仕込み桶を用いた長期熟成が特徴で、かなり濃厚な味わいなのだとか。先ほど買った小林豆腐店の、刺身こんにゃくに合いそうだ。

最後は西の外れの、豪商宅を眺めにいきましょう。