板塀と白壁に挟まれた路地を抜けると、北側から2番目の大工町筋に出る。路地から出たところの米谷家は、肥料と金物を扱っていた豪商の屋敷である。この建物も2階と天井が高く、屋根の上には通し土間の上に設けた煙窓がちょこんとのっている。

中に入ると通し土間が広く、カーブして配置した形から「勾玉竈門」と呼ばれるかまどは、5つも炊き口がある。土間にはかまどの煙を仕切る「煙返し」もついていて、農家の土間のようとも形容されている。土間が広い分、部屋数もほかの商家よりひと間少なく、装飾も控えめだ。

通し土間を抜けたところの裏庭には、井戸とその背後の蔵に挟まれるように、数寄屋造りの座敷が設けられている。蔵前座敷と呼ばれ、御隠居が蔵の番をしながら過ごした建物という。通りに戻ると隣の音村家との間に、また白壁と白壁に挟まれた狭い路地が。半ばまで歩き上を見上げると、白塀の上に細長い青空が覗いて見えた。

また誘われそうだが再び南寄りへ、メインの町並みへ向かいましょう。