
大垣の商店街を歩いていて、店頭で葛が厚ぼったい和菓子を、桶の中で水で冷やしているのを見かける。竹の水口から清水が流れ続け、桶の中の菓子が見るからに涼感あふれる眺めだ。この「水まんじゅう」、市街の随所で湧く清冽な湧水で冷やした、あんを葛で包んだ菓子である。明治期から市街の和菓子屋で作られるようになり、水で冷やされる店頭風景は、水の街大垣の風物詩といえる。
駅前に構える「金蝶園」は寛政10年創業の老舗で、金文字で屋号を記した大きな木看板が存在感ある。店内で食べることもでき、こしあんと抹茶の2個に冷たい煎茶がつく。運ばれてきた饅頭はプリンのようなドーム型をしており、猪口に入れて作りふたをせずに湧水の桶で冷やすため、饅頭とは異なる形になる。ほか皮が厚ぼったいのも、葛饅頭との見た目の違い。水で直に冷やすため、葛粉に水に浸しても柔らかくなりづらいわらび粉を加えているそうで、あんがほんのり透けて見えるのも、涼感をそそる見た目である。
こしあんから軽く割っていただくと、皿に氷が敷かれているため、キンキンに冷えている。意外に腰があり、舌で押すと心地よくプツリと切れ、ヒヤッとした甘さのあんがとろけ出る。抹茶の方は、緑が鮮やかなあんにほんのり苦味が。ともに、冷たさとみずみずしさが相まって、これは散策後のリフレッシュにもってこいだ。
窓の外は大垣の駅前広場が望め、水まんじゅうを冷やす店頭の台越しに、噴水で水遊びする親子連れの姿が見える。水の街の玄関口で象徴的な眺めを見ながら、さんぽの終わりに涼をとりつつ過ごす、大垣のローカル冷やしスイーツ探訪である。