桃の節句の祝い酒に、賀茂鶴×刺身盛り合わせ。簡単ながら家庭のひな祭りで飲むなら、スーパーで買い出しした刺し盛りについでとばかり籠に入れた一本での、このコンビが似合う。

思い出しての買い出しで、あわててちらしの具を手配。マグロにエビに錦糸卵、ハマグリ汁も整えればまずは万全か。ちらしのタネをスチロールトレイのママに並べ、相伴の準備もさあ完了。銘柄を見ず買った瓶ながら、広島の銘酒とは大当たり。赤身やブツをつまんでクイ、とやれば、やや早めの春の香りがほんのり漂い来る。リンゴジュースの娘と乾杯、駆け込み間に合う初春の宴な一期一会。

思えば人形も出さぬままと、慌ただしいこと甚だしい三月三日。子供が成長するごとに簡略化していく年中行事、楽しみにしているのは実は親のほうなのかも。いつまでできるやも知れぬささやかなイベントが、当人の思い出に刻まれ続くことも、また親の願いかな。一献一品の小さな酒宴、しみじみ天下泰平なり。