道後温泉本館隣の道後麦酒館にて、マドンナビール×久万こんにゃくの刺身。歴史を感じる湯殿の眺めを肴に飲むなら、ヘルシーな山の刺身に当地の名作にちなんだネーミングのビールの、このコンビが似合う。

雨の温泉街を小走りに抜けて、駆けつけに選ぶは地ビール醸造元自慢の一杯。アルトのダークな色としびれる苦味で、優雅な名に反して舌と喉に雷が立つ。鯛など海産物が豊かな地にて、選ぶ刺身はあえて山のフグ。シコシコの弾力にヒヤリとした瑞々しさが、鋭いビールのいい受け皿となる。マドンナを傾けて坊ちゃんの世界を思い浮かべつつ、赤シャツならぬ赤ら顔となりゆく一期一会。

粋な浴衣掛けで闊歩が似合う湯処ながら、降りしきる雨は一層強くなる。首に巻いた手拭いは湯浴みでなく、酔いの汗ばみを拭うばかり。外湯巡りへ行くつもりの腰も、一杯空けるごとに一層重くなっていく。一献一品の小さな酒宴、しとしとと天下泰平なり。