
酒飲みが一般的に辛党なのは、酒の肴は塩っ気やピリ辛さがあるものが合う、との定説の影響だろう。確かにアルコールは、米や麦や果実などの糖類を発酵させて作られるもの。対照となる味覚で受けた方が、双方の味わいを引き立てるのも道理といえる。米や麦や果実で作られた酒と、海の幸山の幸の逸品との遭遇。そんな出合いものの妙を楽しむのが、辛党酒飲みの快楽の真骨頂だ。
では果たして、酒に甘いものは合わないのだろうか。甘味は酒の風味や香りを消してしまうといわれるが、パッと浮かぶ例もある。バーカウンターでウイスキーにキスチョコを合わせたり、フレンチレストランでデザートワインとスイーツを味わったり。甘いもの同士ということで、こちらはハマると意外な相乗効果があるのかも。ほかにも試せば様々な甘い「出合いもの」が見つかるはずだ。
大振りの大福をバクッといったところで、生のジョッキをグッとやれば、小豆あんのふくよかな甘みに爽快なのどごしが駆ける。羊羹のたっぷりな砂糖甘さを猪口で受ければ、キレある日本酒の米甘い薫りが立つ。文にしたのを見てうむっ、と関心するかうわっ、と引くかはそれぞれだが、未開の酒肴の園の開拓は酒飲みとしては楽しい冒険かと?