カニを食べ終わっていつも思うのは、鉢に山盛りになった殻も値段に入っているのかな、ということ。これらもお金をとっていると考えれば、何か価値や意味があるべきでは、と感じるのは少々セコイだろうか。殻のおかげで海中や水揚げ時に身肉が傷まず、ゆでる際には旨味を漏らさない。膳にのぼるまでの「器」の役割、などと少々無理して捉え、これも値段のうちと納得しようとしてみたりする。

 骨付き肉料理も同様で、先日神田「味坊」でいただいた豚肉料理二品も、ともに骨付きの部位をぶつ切りにして煮付けた豪快な逸品だった。豚足煮は程よい煮加減でうまく脂が落ち、皮のコラーゲンがねっとりとソフト。醤大骨は背骨の醤油旨煮で、こちらはがっちり煮込んで辛めに味が染みている。豚足はゲンコツあたりの身肉や軟骨がお宝で、醤大骨も背骨にへばりついた肉が涙ものの旨さだ。

 可動部位の肉はその動きや役割のおかげで、他所の部位より味が深くなる、と聞いたことがある。またこれらの部位、バラしてしゃぶり、歯で骨からこそげ、と味わうのに手間はかかるけれど、かえって味の深さに拍車をかけるようにも思える。カニも身肉だけ鉢盛りで食べたって、面白味も旨さも半減だ。味のプレミア感に加えてエンタメ性?も値段のうち、と捉えれば、食後の皿の山盛りの骨にも納得、である。