ある夜の新宿高速バスターミナル | ごんたのつれづれ旅日記

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バスや鉄道を主体にした紀行を『のりもの風土記』として地域別、年代別にまとめ始めています。
話の脱線も多いのですが、乗り物の脱線・脱輪ではないので御容赦いただきまして、御一緒に紙上旅行に出かけませんか。

ある夜の新宿西口にある高速バスターミナルです。

何かの用事で通りかかったのでしょう。
平成17年の撮影という記録があります。

日中は、山梨や長野、静岡、岐阜方面への高速バスがひっきりなしに出入りしていますが、夜はまた、昼間とは違った表情を見せています。

西日本方面へ夜をついてひた走る夜行バスが出発していくのです。

大きな荷物を持って夜行バスに乗り込む旅人たち。

それを見送る人々──。

夜のターミナルの醸し出す旅情は、目的地への距離に比例して強く感じられるような気がします。

小さくなった、とよく言われる日本ですが、夜を徹して走る長距離高速バスのターミナルにに立ち、長旅に備えている乗客やバスの姿を見ていると、そんな感覚は錯覚に過ぎないような気もしてくるのです。

下の写真に並ぶ走るバスの1台目は京都経由枚方行き、塗装が違いますが、2台目も共同運行会社の京都・枚方行きです。
3台目は名古屋行きです

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1台目の枚方行き。
当時、「きょうと」号という愛称でしたが、今は「東京ミッドナイトエクスプレス京都」という舌をかみそうな名前に変わりました。
枚方は、京都と大阪の間にある近郊都市ですが、この路線が登場した時には、枚方などに行くお客さんがどれくらいいるんだろう、ほとんど京都で降りちゃうんじゃないかって思ったものです。
実際はどうなんでしょう?
後付けの愛称からも枚方は無視されてるし。
「東京ミッドナイトエクスプレス枚方」じゃあ、いけないのかなあ?
怒れ!枚方市民!

警備員さんが邪魔ですけど(笑)、この警備員さん、実は大忙しなんです。
後で、その活躍ぶりを御紹介致しますね。

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枚方行き夜行バスを後方から撮影しました。
いかめしいですけど、なかなかかっこいいと思いません?

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こちらは名古屋行きです。
名無しの権兵衛です。
夜行バスながら横4列シートなんです。
平行する他社の路線は3列シートでしたから、果たして競争になるのかと前途を危ぶんだものですけど、約1400円くらい安いんですね。
今話題のツアーバスのような商売方法の先駆けだったわけです。
今でこそツアーバスには、この路線より更に2000円くらい安いものがありますが、この新宿-名古屋線は、定員を抑えて前後の間隔を広くとってあるようです。

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上の3台が出発した後に、乗り場に勢揃いしたのは、宇治・枚方・高槻行きが2台、その後ろに梅田行きです。
なかなか壮観です。

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宇治・枚方・高槻行きは、「東京ミッドナイトエクスプレス宇治」という愛称がついています。
デビュー当時は「宇治」号でした。
お察しの通り(笑)、平成元年に「東京ミッドナイトエクスプレス京都」が登場して好評だったため、平成4年に同じバス事業者が開業させた路線です。
だから、やっぱり枚方が無視されてます。
あ!高槻も、ですよね!
怒れ、枚方、高槻市民よ!

でも、「東京ミッドナイト(以下略)京都」のような2匹目のドジョウはいなかったようでして、平成20年に廃止されてしまいました。
この夜は2台運行の盛況ぶりで、まさか1年後に消えるとは思いもよりませんでした。
やっぱり宇治、枚方、高槻では夜行路線の維持は難しかったのでしょうかねえ?

怒れ!宇治、枚方、高槻市民よ!──このブログの主に!(笑)

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列のどん尻に控えしは大阪梅田行きなりぃ!
名前はついてません。
このバス事業者は、地元の梅田から、平成11年に池袋、平成15年に新宿、品川と、東京への夜行路線を一気に拡充しました。
しかし、新宿線は平成18年に渋谷を始発にしてなんとか持ちこたえていますけど、池袋線と品川線は乗客数があんまり振るわなかったようです。
品川系統は横浜と京都を経由するようになり、さらには池袋系統に統合されて、池袋発品川・横浜経由京都・梅田行き、なんて節操のないことになった挙げ句、今年6月に廃止されてしまいました。

池袋や品川では、夜行路線を維持するには役不足だったんでしょうか。

怒れ!池袋、品川の住民!──って、こればっかり(笑)

東京-大阪間は、とにかく「ドリーム」が強いんでしょうか。

でも、この事業者のバスは乗り心地がいいんですけどねえ。

この写真の当時は、まだ新宿始発の時代です。

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新宿高速バスターミナルで面白いのは、乗っていても見ていても、発車の場面です。

とにかく、ターミナルが入ったオフィスビルと電気量販店に挟まれた敷地が狭いのです。

人通りも多い狭小な路地を、見上げるように巨大なバスが、人混みを掻き分けながら動きだします。

その先の直角に曲がる小さな交差点は、日本の長距離高速バスターミナルの中では、最も運転手さん泣かせのキリキリポイントではないでしょうか。

まず、後ろから枚方行きの2台を追い抜いて梅田行きが発車していきます。

後ろから出ていかないと、実は、先頭のバスが出られないのです。
先頭のバスは、後ろの2台が出発してから、いったんバックして発車するのです。

けたたましくホイッスルが鳴り響き、先ほどの警備員さんが駆け回りながら、声を枯らせて通行人を整理しています。

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続いて枚方行きが発車。
キリキリポイントに差しかかります。
でも、通行人はなかなかどこうとしません。
時間が時間だけに、酔っ払っている人なんかもいましたし。

おじさんたち、そこは、バスの内輪差の内側じゃない?──1歩下がらないと、ひかれちゃいますよ!

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僕が撮影しているのは、これでも道端の建物の軒下なのです。

それくらい、この路地は狭いのです。

しかし、さすがはプロのドライバー!

切り返しなどすることもなく、見事、一発で狭い角を曲がっていきました。

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こうして、バスは遥か関西までの夜の旅に旅立っていったのです。

乗っていきたかったなあ!

今夜もまた、同じ光景が、繰り広げられていることでしょう。

長い航海が、平穏であらんことを──。