あるお母さんからの質問です。「11歳の息子が医師から牛乳を飲むと骨がもろくなると言われて以来、飲まなくなったのですが本当ですか?」皆さんはどう思われますか?

 

この息子さんはそれまでは毎日牛乳を飲んで、激しいサッカー練習をしていたとのことなので、ここでは乳糖不耐症、代謝異常、腎疾患などは発症していないと仮定して回答させていただきます。

 

牛乳で骨がもろくなるという科学的根拠は全くありません。逆に、乳製品が様々な健康効果があるという科学的根拠は数限りなくあります。しかし、ネット検索すると色々と出てきました。またしてもニセ科学(pseudoscience)です。共通している「科学的根拠」は、『30代後半から50代後半の女性を12年間追跡調査した結果、乳製品の摂取には股関節骨折の予防効果はなかった』という1997年に発表された論文と、『牛乳を飲むと血液が酸性になって骨が溶ける』です。

 

「予防に効果がない」と「骨をもろくする」は同じではありません。しかもこの論文は科学的実証ではなく経過観察であり、しかも20年以上前のものです。

 

逆に、2018年にケンブリッジ大学出版発行の科学雑誌に発表された乳製品と骨の健康についての総括論文によると、カルシウム摂取量が1日750mg以下の女子(白人と中国人)の骨ミネラル量が乳製品を摂取することで1年に40-50gの増えたという報告があります。日本人の平均摂取量は600mg以下なので、乳製品摂取による骨ミネラル量増加は期待できると推測します。また、乳製品摂取で白人と中国人女性の骨密度が2年間で0.7-1.8%上昇しました。の白人女性のデータでは、毎日1カップの牛乳で、骨折の危険性が5%以上低下したという報告もあります。

 

 

『牛乳を飲むと血液が酸性になって骨が溶ける』という根拠は全くありません。ただし、「トイレ掃除でわかる病気のリスク」で書いたように、砂糖や炭水化物、タンパク質の食べ過ぎと水分不足が重なると、酸性尿を作り、腎臓でのカルシウムの再吸収能力が弱まります。しかし、牛乳にはカリウムを含むミネラル類が豊富に含まれる水分補給に最適な飲み物ですから、酸性尿の直接原因になるとは考えにくいです。

 

 

毎日の牛乳摂取で骨ミネラル量の増加は少なくても期待できますが、11歳のサッカー選手の骨折を予防できるかどうかはわかりません。というのは骨はカルシウムだけではなくタンパク質や他のミネラル類でできた「活発な臓器」だからです。骨折は骨密度の低下からだけではなく、骨の柔軟性が失われると起こります。栄養環境コーディネーターのテキストでも繰り返し書きましたが、体の状態に合わせて必要な栄養素を摂取し、運動と回復を繰り返すことがとても重要なのです。

 

長くなりましたが、その医師が息子さんにおっしゃったことは間違いです。もし親しいご関係でしたら、ぜひこの論文(PDF)をお渡しいただけると、ニセ科学情報拡散防止になるかと思います。

 

皆さんの質問を受け付けています。ぜひご連絡ください。