7/26山梨新報「しんぽう文芸」。山梨の句友、田辺義樹さん報。

◎歌壇 祢津達子選

★終着へ向け走り切る頼らない群れない慣れない肝に命じて 甲府 小林 衛

 【評より】潔い歌。頼らない、群れない、慣れないは自分へ向けての言葉なのだろう。

★胸あたり大変小波広げつつ水田を泳ぐ二羽の軽鴨 中央 前田良一

★筆くわえ描かれし草花の詩画に励まされたる富弘氏逝く 甲府 高瀬孝人

★笛太鼓遅く聞こえる祭りの日ベッドの我にも赤飯届く 神奈川 望月真佐夫

★能登棚田に蛍がやっと来たと云う媼の笑顔に思わず拍手 甲府 櫻井 稔

★軽トラのゆっくり坂を下り行く収穫の桃いためぬように 笛吹 石倉絹子

★照りつける猛暑の畑に鶯の声を聞きつつ馬鈴薯を掘る 大月 山田令子

★梅雨晴れの一日を家事に精を出し疲れ心地よく満足の夜 甲府 遠藤俊子

★数独に熱中の夫編み物に精を出す我 黙々とふたり 大月 沢登かほる


◎俳壇 山田省吾選

★照り返す庫裏の大屋根雲の峰 大月 小俣義人

★高原のキャベツ畑や雲の蜂 甲府 村松幸治

★夕暮れの河原に待つや月見草 甲府 桑原博子

★蝸牛国中郡内分くる道 大月 志村忠義

 ※山梨県の方言は、甲府市を中心とする国中(くになか)方言と郡内(ぐんない)方言に分かれる。国中は長野・静岡県とともにズ・ズラ言葉、郡内はベーベー言葉。

★ほおずき市葵の紋の法被かな 都留 松沢節子

★はねだしの李を口に野球帽 南アルプス 淡路茂美

★老鶯の声はこの頃山の奥 都留 前田智子

★雨上がり植田に映る蒼き月 中央 志田末男


◎柳壇 坂田よし江選

★愚痴ひとつ母の日記に書いてない 富士吉田 樹 俊平 

★肩寄せて本音吐き出す縄のれん 富士川 依田正男

★親不孝詫びても悔いる墓の前 甲府 風間なごみ

 ※来月から、この風間なごみさんが柳壇の選者をされるようです。「川柳 甲斐野社」同人、編集人。

★いつまでも孫に手を振る老夫婦 甲斐 馬場鉄丸

★暑い日に食べるほうとう乙な味 富士吉田 田辺義樹

★新茶的む妻と作法の真似をして 甲斐 松田健嗣