6/14山梨新報「しんぽう文芸」山梨の句友、田辺義樹さん報。

◎歌壇 祢津達子選

★夕立に友とかけ込みし居酒屋で雨気にしつつ先ずは乾杯 中央 志田木男

★ピカピカのランドセルの一年生大股で行く列最後尾 甲府 高瀬孝人

★武田氏の館に残る水琴窟竹筒で聞く響ける音を 甲府 中澤栄使

★離れ住むそれぞれの家族に病むもおり電話のしどき思案する日々 市川三郷 立川亮子

★押し入れの嫁入り布団の一式に父母の声きく春の宵 市川三郷 片田佐恵子

★人生を切り売りするように着物本雑貨等々買い取りに出す 富士吉田 中村 蓮

★お早うを「おは !」だけの小五孫最初のライン携帯はじめ 埼玉 伊藤一男

★鯵一尾塩焼きにして食せし夫残した骨は標本のよう 甲府 長田由美子

★絵画展二つを終えて四肢伸ばし電動ベッドに眠る夫 埼玉 所 富子

★陽射しさけ虫鳥ネズミ除けをして姫様のよに育てしイチゴ 神奈川 望月真佐夫


◎俳壇 山田省吾選

★足音は夜勤のナース明易し 都留 松沢節子

★夏椿筧かそけし芭蕉庵 富士吉田 小林祥子

★神宿る桂の大樹青嵐 富士吉田 鈴木眞人

★袖まくり金魚掬ひの父手本 中央 志田末男

★母の日や写真に写る手製服 甲府 桑原博子


◎柳壇 坂田よし江選

★ひかえ目を絵にしたような母がいた 富士吉田 樹 俊平

★夢の母ガラス越しでは抱けもせず 東京 久宗明子     

★新茶酌む茶柱入りに期待して 甲斐 松田健嗣

★戻れない瓦礫の街にある我が家 埼玉 伊藤一男

★嘘よりも事実に怖さ多過ぎる 富士吉田 田辺義樹

★荒武者になって勝ち越せ竜電よ 甲府 小林 衛

★夫が逝き白紙の続く日記帳 甲府 三科恵美子

★なつかしく昭和の歌をじっと聞く 富士河口湖 宇野 勇

★妻の酌ひと味ちがう出湯宿 甲斐 馬場鉄丸