◎グループ作品、句誌、より
★田の隅に出番待ちをり余り苗 篠崎ひでこ
★故郷に思いを馳せて枇杷を食ぶ 篠崎清明
(律俳句会)
★沢蟹の穴それぞれの昼の闇 藤野律子
★AIに飼はれる地球夏はじめ 山本桂子
★雑草の夢万緑を仰ぎつつ 古殿草子
(まつら俳句会)
★追ひかけて跳びはぬる子や石鹸王 大内弘美
★みどり児の笑顔に乳歯花は葉に 宮木久代
★春服で集ふ傘寿の同窓会 山口千代子
★老翁の手習ふピアノ春日和 久保川優子
★羅の僧の居並ぶ晋山式 福田久美子
※「晋山式」とは、寺院に新たに住職任命を受けた僧侶が住職として入寺する儀式のこと。
★入学や第一希望の門くぐる 大畑順子
(花鶏つむぎ句会)
★蜜柑山鋏の音の老二人 桑田峰代
★薔薇窓の光の中や立子の忌 西 のぶ子
★春光やデッキに並ぶ紙テープ 森 恒子
(葵の会)
★枝打たれ古刹大楠若葉風 古賀昭子
(長崎番傘川柳会)
★男だと自負する肩に荷が重い 瀬戸波紋
★青い目に座席ニッコリ譲られる 松尾貴子
★杯交わす意外と分かる人の良さ 柏木茂紀
★親背負いヤングケアラー軋む肩 前田大輔
(花鶏3・4月号)
★片足は宙に遊ばせ松手入 辻本みえ子
★石蕗咲くや寺領の隅の風化佛 木下慈子
★胸元にある飯粒や年送る 桑田峰代
(空109号)
★野面積みばかりの棚田冬ぬくし 荒井千佐代
★ここに人在りし証の野水仙 松尾龍之介
★初富士を顔整へて眺めけり 松尾康代
(湾3月号)
★開きたる句帳へひらり梅の 花 村川雅代
(湾3月号)
★息の合ふ娘と数へ日の厨 田原より子
◎「短歌(うた)ありて」より
★地球儀をしずかに回す少年の瞳にちらりちらり灯る火 大谷ゆかり
少年の瞳が見ているものは何なのだろう。小学校高学年ともなれば、関心の領域が社会へ世界へと広がり、各種媒体などの報道に一定の意見を持ちはじめる年頃かもしれない。少年は、ウクライナや中東ガザにおける惨状に、おそらく胸を痛めたのではと思う。「ちらりちらり灯る火」とは、まさに悲惨な戦火そのもの。地球儀における自身の位置の確認にはじまり、さらには、戦火に消えゆく多くの子どものいる地を少年は確認することだろう。そうして、少年はさらに多くのことを感じ取っていくに違いない。直接的な言葉を用いない、すぐれた反戦詠だ。「心の花」4月号より。(心の花・丸山稔)
◎「あわい」欄より