浦和美園~岩槻間を繋ぐことを目指す埼玉高速鉄道の延伸。昨年1月、建設費高騰や建設期間が伸びたため、清水勇人市長は延伸の決断を延期しました。しかし、市は今回、人口減の時代に中間駅に1万人の町を造るという計画を議会に提示してきました。
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東京メトロ南北線は元々、建設計画時の名称が地下鉄7号線でした。
その南北線を埼玉県まで延伸したものが埼玉高速鉄道であり、市内東部の浦和美園駅が終着駅となっています。
この路線を最終的には県北部の羽生まで伸ばす構想が1960年代に登場し、現在はとりあえず蓮田駅までの延伸、その第一歩として浦和美園駅~岩槻駅の約7・3㎞の延伸をさいたま市は今年度推進しようとして、そのための基金(貯金)を約7億円積み立てる予算を市は議会に提出してきました。
直近の地下鉄7号線延伸の情勢は、昨年1月に清水勇人市長は、事業実施要請を工事費の高騰や工事期間の長期化もあり断念したため、一時は地下鉄7号線の延伸も難しい状況となりました。
しかし、市はその後も推進の姿勢を緩めず、地下鉄7号線を推進する計画を練っていますが、その計画はとてもひどいものです。
それでは、地下鉄7号線の延伸の何が問題なのでしょうか。
それは採算性の有無であり、市が延伸に投じる税金が大きくなり、市の財政が破綻あるいは延伸以外に投じる税金が極めて少なくなってしまう、という恐れです。
建設費は、2017年の予測の860億円から1300億円(昨年1月時点)に膨れ上がり、さらに1390億円まで増大しました。
既存のインフラ優先せよ
1月28日に起きた八潮市の道路陥没事故は、未だ原因究明が続いていますが、新しい路線を造ることで、そうした従来のインフラ維持に回すお金も減ってしまいます。
さて、国は延伸を財政支援するにあたり、基準を設けています。
それは、30年以内に運営収支を黒字化するというものです。
さいたま市はその黒字化達成のため、中間駅に人口4千人の町を造ることとしてました。
しかし、これでも、黒字化達成が難しいことから、人口1万人の町を造ることを今回、新しく目標に掲げようとしているのです。
問題は、1万人の町が達成可能かどうかです。中間地域は延伸が実現するまで交通の便が悪く、基本的には延伸実現後、町が発展する可能性が見込めます。
しかし、延伸は工事期間だけで14年かかります(以前の18年よりは短縮された)。
一方、さいたま市は現在人口増加が続いているものの、10年後には人口減少となる予測を立てています。
つまり、延伸完了時には、人口減少とさいたま市はなっているのに、1万人の町を造ると広言しているのです。
市議会では、この延伸を何とか実現するために、中間地域にカジノの誘致を主張する議員(浜口健司議員・当時立憲)や、浦和美園に埼玉県庁の移転を歓迎する自民や立憲の議員がいます。
しかし、カジノや県庁を誘致しないと無理な計画を推進すること自体が無謀であり、延伸により市の財政破綻は確実です。
さて、埼玉県政においては、上田清司前知事は、地下鉄7号線の延伸について消極的と言われていました。
一方、2019年に知事に就任した大野元裕氏は選挙で「あと数マイルプロジェクト」を掲げました。
これは5つの路線延伸計画です。具体的には、①都内の日暮里・舎人ライナーを埼玉県内に延伸、②有楽町線を押上(墨田区)から越谷レイクタウン経由で千葉県野田市へ延伸、③大江戸線を光が丘駅(練馬区)から東所沢駅まで西へ延伸、④都内の東京多摩モノレールを所沢方面まで北へ延伸、⑤そして地下鉄7号線の延伸です。
問題は、この5つとも実現性が低く、唯一可能性が高そうなのは、地下鉄7号線の延伸で、清水勇人市長、大野元裕県知事のコンビで、採算性を無視し、推進を無理やり実行する可能性が危惧されます。
さて、私はこの大野知事5路線とも、今後の日本の人口減少時代を考えると、過剰投資と考え反対ですが、全てのインフラ投資に反対しているわけではありません。
良いインフラ投資は賛成
私が期待しているのが、羽田空港アクセス線です。
これまで羽田空港に鉄道路線で行くには、浜松町の東京モノレールか、京急に乗る必要がありました。
しかし、アクセス線の東山手ルート完成(2031年度予定)で、上野東京ライン(宇都宮線、高崎線)の利用者は、乗り換えなしで羽田空港に行くことができるようになります。
従来より10分以上短縮され、運賃も安くなる可能性が高くなっています。
また、埼京線もアクセス線の西山手ルートが完成することで、羽田空港まで直通運転となります(完成時期未定)。
このアクセス線に、私が肯定的なのは、JR東日本が従来あった貨物線(大汐線)が使われなくなったのを有効活用することにしたため、建設コストが比較的低く抑えられているためです。
人口減の時代、既存インフラを有効活用することが重要です。