前回、廿日市市の給与水準は他の団体に比べて高くないのに、総人件費は住民一人当たりにすると、人口規模、産業構造が似ている類似団体より24.6%高いのはなぜでしょうか、というところで終わりました。

 

これは、金額でいうとおよそ1年で17億6千万円類似団体より多く人件費を使っているということです。これ膨大です。ネットで調べるとプロバスケットリーグのトップである千葉の総収入額に匹敵します。小さな小学校なら毎年1つ建つレベルです。

 

このことが、廿日市市の財政が厳しい主要な原因と言わざるを得ません。

 

職員数のデータを、「財政状況資料集」という総務省の統計で見てみます。

 

 類似団体50団体の平均より住民千人当たり2.57人多いということになっていて43%も多いのです。50団体中多い方から2番目で、廿日市市の人口を11万4千人とすると、平均より293人多いということになります。

 

 市役所ももちろん財政の厳しい主要な原因が職員数にあることには気づいていて、2016年2月に職員の削減計画を作りました。2015年4月から2021年4月の間に50人の削減計画です(廿日市市定員管理計画<2015年~2021年>)。293人多いところを50人削減というのは甘い印象ですが、廿日市市の面積が類似団体に比べて特に広いことを考えれば、少なくすればいいというわけではないというのは分かりますが、皆さんはどう考えられますか。

 

 では、実際の職員数の推移はどうなっているでしょうか。2015年4月~2019年4月の4年間で20人の削減です(廿日市市人事行政の運営等の状況の公表)。あと2021年4月までの2年間で30人の削減ですが、2019年度末退職予定者数が36人で2020年4月採用者数が41人だったところを見ると職員数は増えているのではないでしょうか。また、2021年4月採用はすでに38人採用する公募を終えています。上記の定員管理計画での2020年度末退職予定者数が35人であることから、職員数は2021年4月時点でも増えることになるのではないかと思います。

 

 職員の削減計画を作りながらもそれができないのは、市長と議会が本気で取り組まなかったからです。また、今の市長も職員組合に選挙の協力をしてもらった見返りとして職員削減に取り組むことはしないと約束したと聞いています。しかし、市長になってみてその財政の厳しさに驚いているはずです。継続する土木事業を続けるためにどの事業を削っていくのか、悩んでいるのではないでしょうか。現在編成中の2020年度予算が注目されます。

 

 ではなぜ前市長は自分で削減計画を作りながら職員数削減に本気で取り組まなかったのでしょうか。内部の具体的な事情は知りませんが、私が、藤田県政時代の広島県で経験した職員削減は、強力なトップダウンで行われました。

 

 トップが決めた通りするには、厳しい職員労働組合との交渉を経なければなりません。交渉当事者になる幹部にとっては、何度も長時間にわたる組合団体交渉を経て、徹夜交渉も経て、違法ストを抑えながら実行していっていたのです。その苦労は、尋常ではありませんでした。

 

 議会のバックアップとトップ及び幹部の相当の覚悟がなければ実行できないということです。議会も実行を促さなかった(毎年度唯々諾々と市長の提出する職員増員の予算案を議決していった)ということですし、市長をはじめ市の幹部にはその覚悟ができなかったということだと思います。

 

 折しも、国では総務省が2040自治体構想というのを策定していて、2040年の自治体の職員数を半減しても機能する自治体の在り方を提言しています。IT、ロボット化による事務効率化を目指しているわけです。

 

 生産年齢人口が継続的かつ劇的に減少していく中で、公務職場(国県市町)に人材を多く回す余裕は日本経済にはないのです。廿日市市役所も行政の当事者としてぎりぎりの対応をしなければならないはずです。

 

 その中で、自覚していても改善ができない組織風土というのはどうでしょうか。しかし、これはもう終わってしまったことです。そのほかに、財政が厳しい、苦しい原因はあるのでしょうか。

 

 次回は、義務的経費のうちの扶助費(社会保障関係経費)を見てみましょう。