建通新聞より転載


概算事業費1625億-1995億/銀座~国際展示場に地下鉄新線


【中央区の検討調査報告】

 東京都中央区は、都心部と臨海部を結ぶ地下鉄新線の整備に向けた検討調査報告書を明らかにした。中央区「銀座付近」から江東区「国際展示場付近」までの約5㎞を約9分で運行し、中間駅は3駅とする計画だ。需要予測を設定するための設定条件では開業を2025年とし、概算事業費は5両編成対応施設の場合は約1625億円、10両編成対応施設の場合は約1995億円となる。今後の課題として、広域的な交通ネットワークの形成に対応するため「銀座付近」から先の延伸も検討の必要があるとした。
【開業25年設定、中間駅3駅】

 調査の検討対象地域は、中央区銀座、築地、月島、勝どき、豊海町、晴海および江東区豊洲6、有明。同地域では将来の住宅開発が約2万5000戸計画され、人口換算すると今後10年以内で5万人以上が居住する可能性がある。このうち、選手村跡地の約6000戸の住宅転用などを含む晴海地区では2万2000人の人口増加が見込まれる。

 新銀座駅(仮称)から新国際展示場駅(仮称)までの4.8㎞の5駅(中間駅3駅)を9.1分で運行し、運行本数はピーク時で1時間15本、オフピーク時で1時間8本と設定した。

 輸送人員は25年で1日当たり12万人、30年で同約13万人となる。輸送密度は25年で1㎞当たり約7万5000人、30年で約8万1000人となり、東京臨海高速鉄道や、東京モノレールと同程度、ゆりかもめの2倍になる。費用便益比(B/C)は5両編成対応施設の場合は30年間が1.6で、50年間が1.9、10両編成対応施設の場合は30年間が1.4で50年間が1.6となり、5両編成対応施設は15年、10両編成対応施設は19年で累積資金収支が黒字転換するとしている。

 事業主体は営業主体と整備主体とも第三セクター、事業制度は都市鉄道整備事業費補助の適用、運賃計画は東京臨海高速鉄道並みと想定する。

 都心部~臨海部間の所要時間短縮や臨海部の鉄道不便地域の解消に加え、既存駅の容量不足や急増する外国人観光客、災害リスクの対応などからも路線整備の意義・必要性があるとした。

 今後の課題では、国家戦略特区、アジアヘッドクォーター特区として臨海部の広域的な交通ネットワークの形成に対応するため、新銀座駅から先の延伸を検討することを挙げた。また、東京都が検討しているBRT(バス高速輸送システム)や既存の鉄軌道、路線バスとの役割分担や連携について検討する必要があるとしている。

 調査は、運輸政策審議会の次期答申に位置付けられる必要があるとして、森地茂政策研究大学院大学客員教授を委員長とする検討調査委員会が行った。オブザーバーとして、国土交通省関東運輸局、東京地下鉄、東京臨海高速鉄道、都市再生機構が参加している。事務局は中央区環境土木部環境政策課と、運輸政策研究機構が務めている。