​ またしてもアメリカの有力地銀が破綻した。アメリカ連邦預金保険公社は1日、地銀のファースト・リパブリック・バンク(FRC=写真)が経営破綻し、公的管理下に置いたと発表した。​


 

FRCの資産規模は全米14位、破綻銀行の資産規模としては過去2番目の大きさ​

 3月10日にシリコンバレー銀行(SVB)が、同12日にシグネチャー・バンクが破綻して(3月15日付日記:「アメリカの金融システムを揺さぶったシリコンバレー銀行の破綻;日本への波及に懸念」を参照、なお3月21日付日記:「世界最重要銀行30行の1つ、クレディ・スイスが同業のUBSに身売り、リーマン・ショック再現を防ぐ」も参照のこと)、これで終わりかと思ったら、ついに第3の地銀破綻が起こった。

 FRCの資産規模は、22年末で全米14位。破綻した米銀の資産規模としては、3月のSVBを上回り、過去2番目の大きさとなった。

​ なお同行は、商銀大手のJPモルガン・チェース(写真)によって買収されたので、預金は全額保護された。

FRBの急激な利上げで損失拡大​

 FRCの破綻は、先週からの株価の急落で、ほぼ予見されていた。連邦預金保険公社が各銀行に打診し、JPモルガン・チェースがやっとFRCを買収することで破綻決定となった。

 アメリカ地銀の相次ぐ破綻は、FRBの急激な利上げの犠牲と言える。昨年初からの7回、計4.25%の急激な利上げは、預金額を膨らませた地銀に大打撃となった。最初に破綻したSVBが典型例だが、景気悪化の予見で企業は銀行から金を借りなくなった。やむなく銀行、特に地銀は、貸出先の無くなった資金運用として長期国債を購入したが、急激な利上げで短期金利に比べて長期金利の方が利回りが低いという長短逆転が命取りになった。保有する長期国債に莫大な含み損が生まれたのだ。
 

支払いに充てるため含み損の国債も売却せざるを得ず​

 しかし銀行は、満期まで持てば損失は生じない。ところがそうした莫大な含み損が預金者から不安視され、破綻前にと預金解約が殺到する。すると払戻金の支払いのために地銀は長期国債を損失覚悟で売らざるを得なくなる。そして莫大な損失が生まれる。それが、ますます預金者に不安をよび、解約が殺到する――という悪循環となった。SVB破綻は、まさにそれを地で行った破綻だった。

​ そして現代のネット時代は、1973年(昭和48年)の日本の豊川信金のような「噂」で取付騒ぎ(写真)とならない。SVBの預金者の不安を煽ったのは、預金者のSNSへの投稿である。​

 

 

ネットバンキングであっという間に預金が引き出された​

​ そしてネット時代の銀行は、店舗前への預金者の取付騒ぎとはならない。インターネットで自由に預金をおろせるのだ。かくてSVBは、店舗前にさほど預金者が並ばないのに(写真=SVBの支店前。上の豊川信金の窓口と比べてほしい)、預金はそれこそあっという間に消失した。破綻前の2日間で、全預金の80%が引き出されたという。​

 

 

 こうなると、1度不安視された地銀には手のうちようはない。

 ネットバンキングの恐ろしさである。

 日本は、銀行のネットバンキング化が遅れているが、これが幸いしている。また植田新総裁の日銀も、利上げをしないので、長短金利の逆転は起こっていない。だから日本では、そう簡単には地銀は破綻しないだろうが、アメリカではまだまだこれからも地銀破綻が起こる可能性のあることは知っておきたい。


​昨年の今日の日記​:「戦争をしかけ、世界から非難されるロシアに国内空洞化の可能性、IT技術者中心に国を捨てる若者たち」