アメリカと北朝鮮ならず者集団との「舌戦」対決が剣呑になっている。マーケットも、朝鮮半島有事を懸念して、弱基調となっている。
 それにしても、国民の窮乏をよそに核とミサイルの開発に狂奔する北朝鮮ならず者集団はどこまで今の戦術を進めるのだろうか。

 

北朝鮮の輸出は3割減の見込みも石油禁輸はなく
 7月28日深夜、射程1万キロに達するICBM第2弾を発射したが(写真)、これに対し国連安保理は8月5日、過去最大の年10億ドルの制裁効果が見込まれるという対北朝鮮制裁を決議した。
 同決議は、北朝鮮ならず者集団と気脈を通じるスターリニスト中国とロシアも賛成した。

 


 これにより北朝鮮ならず者集団が貿易の9割と頼るスターリニスト中国の対応如何だが、石炭、鉄鉱石、鉛という地下資源と海産物の輸出が禁止されるのは、これらが北朝鮮ならず者集団の輸出額の3分の1を占めるだけに、これまでで最も強力な制裁措置になる。ただ、今回もスターリニスト中国が抵抗したため、石油禁輸は実施されなかった。

 

海外で稼ぎ労働者の新規制もなく、新決議は尻抜け?
 またロシアが大量に受け入れている極東の北朝鮮人労働者も、増加こそ禁止されたが、現状は維持される。したがってスターリニスト中国在住の朝鮮料理レストランなどを含む北朝鮮人労働者の送金もあり、ならず者集団の核とミサイル開発資金は根絶やしにはできない。
 ちなみに北朝鮮の海外で稼ぎ労働者は、収入のうち年7000ドル(!)を北朝鮮ならず者集団に上納する決まりという。これらの総額は、年10億ドル超といわれ、それを知ると、今回の強力な決議も、やっぱり尻抜けになりそうである。

 

核・ミサイル開発はやめない
 かくて北朝鮮ならず者集団の制裁には手詰まり感が漂う。アメリカのトランプ政権が対北朝鮮ならず者集団への武力行使に慎重だからだ。
 すなわち北朝鮮ならず者集団は、「世界の警官」が不在、打つ手無しという利を活かし、事実上のフリーハンドを得ている。
 だから今後も射程を伸ばしたICBMを発射し、核実験も実施するだろう。
 しかし核とミサイル開発には巨額のカネがかかっている。スターリニスト中国とロシアの制裁破りはあっても、西側世界からは完全に経済遮断されているのに、どうやって資金を調達しているのか謎の部分が多い。ロシア、スターリニスト中国、さらにはASEAN諸国などの北朝鮮人出稼ぎ労働者の送金が、かなりの比重を占めているにしても、である。
 スターリニスト中国が、暗黙のうちに支援しているとしか思えない。

 

核とミサイルの開発の最終目的は
 さて、北朝鮮ならず者集団がこれほど全力を傾ける核とICBM開発の最終目的は、何か。
 マスメディアは、アメリカから金王朝の体制保障を得るのが金正恩らの目的だ、と流しているが、いかにもマスコミらしい浅薄な分析、と言うしかない。ちなみに北朝鮮ならず者集団は、これまで1度も核・ミサイル開発の目的を明言したことはない。
 それにティラーソン国務長官は、何度も北朝鮮の体制の転覆を求めない、と明言している。

 

北ベトナムの対南ベトナム併合戦略の教訓
 上記のような浅薄な分析が出てくるのは不思議だが、僕は彼らはもっと大きな目的を持っていると見ている。
 金正恩らの当面の目的は、アメリカとの直接交渉で1973年1月27日にアメリカと北ベトナム(北ベトナムの傀儡の南ベトナム臨時革命政府と反共のサイゴンの南ベトナム政府を含む)が調印したパリ和平協定(写真)の再現だと思われる。

 


 長く続いたパリ会談の末、4者(事実上はアメリカと北ベトナムの2者)で結ばれた協定の結果、アメリカは北ベトナムが和平協定に違反しない保障を何も求めず、一方的に南ベトナムから撤退した。

 

パリ和平協定の再現狙い
 そしてそれを待っていた北ベトナムは、2年後の1975年3月、ホーチーミン作戦を発動し、南ベトナム全土でサイゴン政権に対する一斉攻撃を開始し、南ベトナム政府軍を崩壊させ、同5月、首都サイゴンに入城(写真=サイゴンの南ベトナム大統領府に侵入する北ベトナム軍戦車)、翌76年に南ベトナムを吸収合併し、統一ベトナムを作り、現在に至っている。

 


 もし北朝鮮ならず者集団がワシントンとニューヨークに到達する核ミサイルを実戦配備すれば、今のトランプ政権なら、北朝鮮ならず者集団の呼びかけに応え、敗北のディールに応じる懸念が高い。

 

「朝鮮戦争」で挫折した韓国武力併合の再来か
 つまり1973年のパリ和平協定型のディールである。
 そして、一方的に韓国から在韓米軍を撤退させてしまうのだ。
 在韓米軍という支えを失えば、韓国は鉄の軍事国家北朝鮮の敵ではない。
 1975年のサイゴン入城以前と以後に起きたように、韓国から知識人や保守層、富裕層が一斉に逃げ出す。一方で、韓国内に潜んでいた北朝鮮ならず者集団のスパイ団による祖国統一を求める軍事行動がソウルなど各地で起き、彼らの求めに応じる形で北朝鮮人民軍が軍事境界線を突破し、ソウルに入城するのだ。
 1950年の金日成による韓国戦争(いわゆる「朝鮮戦争」)では、アメリカは直ちに国連安保理で国連軍派遣を決議し(この時、北朝鮮派の共産ソ連は安保理をボイコットして不在、中国は今の台湾の蒋介石政権だった)、赤化軍事統一を防いだ(写真=北朝鮮人民軍の侵略で南へと避難するソウル市民)。

 


 しかし今のトランプ政権は、それをも容認するのは間違いない。

 

対北朝鮮融和策はナンセンスそのもの
 そうした一貫した戦略が金正恩らならず者集団にある以上、どんな対北朝鮮融和策もナンセンスだ。
 金正恩にすれば、自らの絶対的安全が確保されるうえ、祖父の金日成も成し遂げられなかった赤化統一である。そうなれば、自身の最高の安全保障環境ともなる。
 その最終目的のための、核・ミサイル開発である。アメリカの軍事制裁がない、と見切ったいる以上、奴らは決してミサイル発射を止めないし、核実験も中断しない。
 おそらく今の習近平のスターリニスト中国もプーチンのロシアも、北朝鮮ならず者集団による南北赤化統一の可能性を見据えている。アメリカのいなくなった韓半島は、彼らにとって居心地は悪くないのだ。
 この4月にトランプ大統領が習近平と結んだディールなど、全くの茶番だったというわけだ。

 

昨年の今日の日記:「リオ五輪柔道の日本人選手のメダルラッシュのかげに;かつての紛争国、小国コソボのケルメンディ選手が女子柔道で金メダルの快挙」