スターリニスト中国の経済の予想以上の悪さを印象づけた上場石油大手3社の決算だった。

 

3社合計で前年同期比8割減、海洋石油は赤字
 中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国石油加工(シノペック)、中国海洋石油の大手上場3社の今年上半期(1月~6月)までの決算で、3社合わせた純利益は、前年同期比で8割も減った(写真=シノペックの決算発表)。長引く世界的資源安のあおりをくったが、後述のように内容は実はもっと悪い。


 油田開発を手がけるペトロチャイナは、実に純利益は前年同期比98%減、ほとんど赤字寸前である。また海洋石油は、株式上場後、初めての赤字決算となった。何とか落ち込みを最小限に抑えたシノペックでも、22%の減益だ。

 

原油価格は以前の水準に戻らない
 決算の急速な悪化は、前述の世界的資源安のほか、スターリニスト中国自身の経済減速も響いている。
 また原油安は、構造的なものだ。世界的な環境保護のための低炭素社会化志向と省エネルギー化、そしてシェール革命のため、おそらくかつてのような1バレル=100ドル台には決して戻らない。スターリニスト中国自身の経済も、数年内に1~2%程度の低成長社会に陥ることは免れない。
 つまり上場3社の不振は、構造的なものである。

 

中国GDPの1割という規模の大きさがリストラを妨げる
 日本やアメリカなら、余剰設備の廃棄や人員の大リストラを行って、環境変化に適応するが、スターリニスト中国では、国有であるだけに、そうはいかない。
 例えば3社を中心とする石油産業は、スターリニスト中国のGDPの1割を占める。さらに関連企業を含めた被雇用者は、日本の自動車産業の2倍に相当する約1000万人もいる。
 この規模の大きさが、大規模な設備廃棄やリストラを妨げる。

 

海外油田権益に巨額の含み損、だがままならない減損処理
 実際、海外石油権益では原油・天然ガス安で、減損処理が必要なのに、決算を繕うために微少に留まった。日本のメガ商社(三菱商事、三井物産など)は、過年度決算で海外資源鉱山の大規模な減損処理を行い、大幅減益に陥ったが、逆に身軽になったことで、今年度は一転、大幅増益が予想されている。
 1バレル=100ドル台の時代に昇竜の勢いで海外資源権益を買い漁ったスターリニスト中国国有企業は、今や高値づかみになった油田や鉱山の権益が巨大な含み損となっている。ペトロチャイナでも、1兆円規模の含み損を抱えている模様だが、わずかな減損処理で済ましている。資源価格の回復を待つつもりだろうが、それがカラ頼みであることは前述したとおりだ。
 3社で数兆円という巨大な含み損を抱え、減損処理もままならず、どうやって激変する世界経済に関与していくのか。
 ここにもスターリニスト中国の硬直化したゾンビ企業の芽が生まれようとしている。

 

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