桜島、そしてそれ以前は箱根・ 大涌谷周辺、口永良部島の噴火騒ぎが続く。昨年は御嶽山の爆発で多数の登山客が犠牲になったことも記憶に新しい。


日本に火山は110、それがもたらす温泉源泉は1万5000も
 どうやら東日本大地震をきっかけに、日本列島は火山の活動期に入った気配が濃厚だ。
 日本の火山は、全部で110山。プレートの沈み込みのすぐ西に位置する日本列島は、火山、地震と否応なく直面する。
 地震には利点はないが、火山によって享けるメリットは、実は計り知れない。すぐ思いつくのは、温泉だ。日本には、全国で実に1万5000もの源泉があると言われる。温泉のない都道府県は、おそらくないほどだ。


火山は土壌を豊かにする
 その他に、目に見えない温泉の効能は、大きい。わが愛読する『人間はどこまでチンパンジーか?』、『銃・病原菌・鉄』などの著書で著名な生物地理学者ジャレッド・ダイアモンド(写真)によると、日本が世界に誇る縄文文化とその後も続く植生の生産性の基になったのは、火山も主要因の1つだという。おかげで日本列島は、世界でも稀に見る土壌の豊かな土地だとしている。


ジャレッド・ダイアモンド

 ダイアモンドによると、土壌を豊かにする地質学的要因は3つあるという。火山、氷河、地殻の隆起、だ。
 いずれも植物に重要な地球のミネラルを地表に供給する原動力である。


氷河と地殻の隆起も
 例えば火山も地殻の隆起もないが、氷河のあったアメリカのコーンベルトのカンザス州などは、氷河期には分厚いローレンタイド氷床に覆われていた。この時期を表すのに、かつては「カンザス氷期」という地質学・古気候用語もあった。
 後氷期に巨大なローレンタイド氷床が退いて、跡には氷床の削った地殻のミネラルが豊富に残されたから、豊かな表土が形成され、大コムギ地帯となったという。
 日本は、その3つすべてが揃う。前記の氷河は、日本各地の山岳にカールを残すように、氷河期には山岳域に山岳氷河が発達していた。
 地殻の隆起も、プレートテクトニクスのおかげで、地殻が押されてこれまた各地に残る。


地球内部から火山が運んできたミネラルが土と海に栄養もたらす
 そして火山である。この中で火山噴火で供給されるマグマや火山噴出物に含まれるミネラル量は膨大だ。カリウム、ナトリウム、カルシウム、リン酸塩などが、土壌を豊かにし、と植物を茂らせる。
 こうしたミネラル類は河川を通じて海にも供給され、海浜に豊かな海藻類を繁茂させ、それを食べる魚介類、ウニ・軟体動物などが育まれる。
 さらにこの3要素に加えて、日本列島は稀に見る豊かな降水量に恵まれている。
 この諸条件が、後氷期に前述のように世界に冠たる縄文文化を築かせたのだ。
 例えば縄文時代ピークの中期(約4500年前)に、本州だけで30万人近い人口がいた。農耕の始まる前にこれだけの人口を養えたのは、北米のカリフォルニア北部や北西海岸など一部に過ぎない。この地域も、前記3条件の全てが揃い、その上、降水量に恵まれていた地域だ。


銅や金など有用鉱物もマグマが運ぶ
 縄文時代以後、稲作基盤の弥生文化が広がると、日本は爆発的な人口増が起こる。すべてが、1つに火山の恩恵である。
 さらに火山は、地表近くに有用な金属を地球中心部からマグマを通じてもたらす。
 日本の江戸時代、銅山・金山開発が進み、例えば産銅量は世界の3分の1を占めた時期があった。出島を通じて、日本の銅はヨーロッパに輸出された。金は、有力な輸入通貨となった。
 総じて言えば、温泉の経済効果も含め、火山の恩恵は災害による被害よりはるかに大きい。
 NHKや民放は、ニュースでヒステリックに火山被害を騒ぎ立てるが、火山の恩恵を忘れてはいないか。


焼岳

磐梯山

富士山

 写真は、上から上高地の焼岳、磐梯山、富士山。


昨年の今日の日記:「ポーランド紀行:旧ユダヤ人街カジミエシュ地区とここに足跡を残さなかったローザ・ルクセンブルク」