なぜ、人並みなのだろう。


大学生になるために、僕は色々な知識を身につけた。

僕の身につけた知識の中のロボットは、何かしら人間ができないことをできる存在であり、

ロボットは人間に頼られる存在のはずだ。


でも、僕は全ての能力が『人並み』の存在であり、

ロボットの僕より頼れる人間は星の数ほどいるのだろう。

じゃあ、なぜ僕は生まれたのだろう。


ロボットは、人間ができないことを補うために作られた存在のはずだ。

でも、僕は人間並みのことしかできない。

人間なんていっぱい存在するし、そもそも僕を作ったのも人間だ。

僕が存在する意義はなんだろう。

僕の記憶が始まった時から、そんな疑問を持っていた。


僕は川田さんというおじいさんと一緒に住んでいる。

川田さんが何者かはよく分からない。

僕を作った人かもしれないし、違うかもしれない。

川田さんは口数が少なく、特に自分の話はほとんどしたことがない。

でも、川田さんの数少ない言葉で印象に残っている言葉がある。


「科学が求めるものの頂点は、人間なんだよ」