ビックリマークマリアが9月に名古屋フィルと共演します。ビックリマーク
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私がトトロことSven Berger と出合ったのは1975年の夏でした。
皆さんはまだ生まれてもなかったでしょう。あ、赤ちゃんだったかな。
当時私はドイツで呼吸・発声・リラクゼーションみたいのことを勉強していて、プライベートのその学校は夏休みに音楽のコースに校舎を貸し出していたのです。
日本以外に帰る所もないし、貧乏だったので学校に残っていたのですが、古楽器なら何でも音を出す変わった先生がいるよ、と聞いて、珍しい動物でも見るような野次馬根性で見にいきました。
で、なんとなく意気投合して、というわけです。
管楽器ならモダンでも古楽器でも吹いちゃうという人で、ツィンク(コルネット)は世界でも5指に入ると言われていました。もっともその頃ツィンクでまあまあ音が出る人は世界で10人ぐらいしかいなかったんじゃないでしょうか。
あ、ツィンクでジャズをやる人の中では世界一、というのは彼しかそんなことする人がいなかったから。
北欧からコンニチワ-スヴェンとツィンク・2
ツィンクとはこんな楽器です。

次の年、1976年の夏休みはスウェーデンとドイツを行ったり来たりして過ごしました。
トトロは秋にスペインのモンセラート修道院でモンテヴェルディーの「聖母マリアの夕べの祈り」の録音があり、練習と称していつもツィンクを持って歩いていました。
私はトトロと会う前に既にこの曲は大好きでした。
古楽器だとツィンク奏者が3人要ります。今はもう誰でも吹くけど、当時は第一、第二パートは物凄く難しいことになっていました。
私が車を運転して、彼は助手席でピョロピョロ吹いています。貧乏でカーラジオがないので、こういう人を横に置いてあるの、なんて冗談言いながら。
でも、待てど暮らせど、あの有名な素敵なパートを吹いてくれないのです。
「練習しないの?」と聞くと
「だって、まだ楽譜貰ってないもん」
「えっ、もう2週間で録音じゃないの!?」
「うん、でも最高音がどれだか知ってるからその音さえ確保しとけばいいんだ」
ふーん、だからさっきからジャズのインプロで高音に向って駆け上がってたのかあ、不思議な練習だなあ、と思っていました。

$北欧からコンニチワ-モンテヴェルディ
これがそのレコードです。35年前の録音だけど、CDにもなっています。
HMVでも売っています。

こういう録音というのは音楽家にとって我慢比べみたいなものらしいです。
モンセラートの修道院での録音で、少年合唱団の子ども達を優先。午後から修道院に入って、他の部分が終わるまでじっと待っている。教会の外には出してもらえず、夜中の2時ごろ、はい、じゃお願いします、と言われて一発でクリアーしないといけない。プロの音楽家って大変な仕事なんだなあと思いました。

(続く)