2006-03-25 16:27:45

終着駅に、光はあるか。

テーマ:映画
【ミッドナイト・エクスレス(映画)】

<1978年、アメリカ>
●監督/アラン・パーカー
●出演/ブラッド・デイビス、アイリーン・ミラクル 他


なんだか、いやに尾を引く映画だ。
ひとことで言えば「脱獄もの」なのだが、
「大脱走」や「ショーシャンクの空に」といった
他の同ジャンル作品と決定的に違うのは、
この映画が実話を元にしているという点だ。
それだけに、全編に重苦しい空気が漂う。

主人公のアメリカ青年は、トルコから
アメリカへの帰国時、飛行機に乗り込もうとした
ところで麻薬所持で逮捕、
トルコの刑務所に収監される。
異国の閉ざされた世界で、何とか数年間の
服役期間を終えて出所しようとしていた彼に
下されたのは、前回の判決を破棄し、新たに
懲役30年を課すという信じがたいものだった。
青年は絶望の淵で、何とか脱出を試みる…

実際に麻薬を持って出ようとしていたことは
事実なのだから、自業自得といえばその通りなの
だが、それでも突然、懲役30年をプラス
される理由にはならない。
この判決には、当時のトルコの麻薬事情、そして
アメリカとの間の政治的なかけひきとして
利用されたという背景があるらしい。

言葉の壁に加えて、ひとクセもふたクセも
ある囚人たち、そして横暴きわまりない刑務官。
異国の地で囚われの身となった者の、
いいようのない不安が、画面からにじみ出ている。

「ミッドナイト・エクスレス」とは、
現地で「脱獄」を意味する隠語なのだとか。
余談だが、あの沢木耕太郎の名著「深夜特急」は
この作品を見た作者が、自分も旅先であの主人公
のようになっていたかもしれない、
という戦慄を覚えたのが、執筆のきっかけで、
タイトルもこの映画から取ったと、以前書いていた。

命がけの脱獄を試みた主人公は、
果たして光を見ることができるのか。
この映画には先に挙げた脱獄もののような
爽快感はない。しかしまちがいなく、
見た者の記憶に長く、深くとどまる。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
ミッドナイト・エクスプレス

 
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2006-03-19 09:39:42

S(少し)、F(不思議)な、家族の物語。

テーマ:
【凍りのくじら(本)】 

●著者 :辻村深月
●出版社:講談社ノベルス(2005.11 発行)
●価格 :¥1,040


あの藤子・F・不二雄は、
SFを【サイエンス・フィクション】でなく、
【S(少し)、F(不思議)】と捉えて、
その通り、幾つもの少し不思議な物語を紡ぎ出した。
この小説には、その藤子・F・不二雄の代表作である
「ドラえもん」のエッセンスが各章に盛り込まれ、
サブタイトルも「どこでもドア」「カワイソメダル」
「どくさいスイッチ」など、秘密道具の名前に
なっている。

高校生の芦沢理帆子は、入院中の母とふたり暮し。
藤子・F・不二雄を愛するカメラマンの父・光は
5年前に失踪したまま、行方不明になっていた。
そんな理帆子の前に、別所あきらという一人の
青年が現れる。彼との交流を通して、傷ついた
理帆子の心は、少しずつ癒されていくのだが…

繊細で透明感あふれる文章が、心地いい。
心理描写も巧みで、主人公、理帆子の心の起伏が
手に取るように伝わってくる。
ドラえもんの秘密道具、そして藤子作品の
世界観との絡ませ方もうまい。
そして、読み終わってはじめて気づくのだ。
そうか、これはやっぱり、
S(少し)、F(不思議)なんだ、と。

ただタイトルについては、ちょっと?
読み通した時の印象と、タイトルが結びつかない。
中でそれについての説明はあるんだけど、
ここまでドラえもん的エッセンスで通すなら、
タイトルもそれっぽい方が良かったのでは。

最後に参考資料がこう挙げられている。

「ドラえもん」全45巻
「大長編ドラえもん」
及び、そこに流れる哲学と優しさの全て。

作者、よっぽどドラえもんが好きなんだろうなあと
同じ藤子ファンとして、なんだかうれしかった。
今回はじめて読んだ作家だけど、
この、やわらかくも鋭い感性には今後も注目したい。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
辻村 深月
凍りのくじら


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2006-03-15 02:53:07

消えない余韻。

テーマ:映画
【私の頭の中の消しゴム(映画)】

<2004年、韓国>
●監督/イ・ジェハン
●出演/チョン・ウソン、ソン・イェジン 他


韓国映画では日本での歴代ナンバーワンヒット
になった作品。
昨今の定番である「泣ける」を宣伝文句にしてた
けど、見事泣かされてしまった。

テーマは「若年性のアルツハイマー」。
5月には、渡辺謙主演の「明日の記憶」
http://www.ashitanokioku.jp/
も公開されるなど、このところ、この病気を
テーマにした作品が目立つのは、社会的な認知が
高まっていることが背景にあるのかもしれない。

映画は、ふたりの出会いから結婚、妻の発症、
そして別れまでを描いているが、何よりも
主演ふたりの存在感が際だっている。
夫のチョルスを演じたチョン・ウソンは
建築現場で働くガテン系の男にふさわしい
野性味あふれるルックスと体格で、男から見ても
ほれぼれするかっこよさ。
一方、妻のスジン役のソン・イェジンは
「ラブストーリー」などで見せた、
かわいさとはかなさを兼ね備え、次第に記憶を
失っていくという難しい役所を熱演している。

全体としては2時間の中で、ふたりの出会いから
始めているので、少々かけ足の印象がする。
実際の症状が出始めてから進行するまでを、
もっと丁寧に描けていたら、さらに感動が
深まったのにと、そのあたりが残念に思う。

しかし、この映画には必ず泣いてしまうだろうと
思えるポイントがあって、
それはもう涙をこらえるのが難しいほどだ。
とくにチョン・ウソンの泣きっぷりがいい。
ああ、男が泣く時ってこうだよなあと、
思わず、もらい泣きしてしまうのだ。

ラストは、希望のイメージを抱かせるような
展開とともに終わるが、個人的には少々間延び
しているように感じた。
サッと終わった方が、その分余韻があったのでは
ないだろうか。

バッティングセンター、コンビニなど、
身近な場所が舞台になっていて、
その分、自分のすぐ隣の物語として見れる。
見た後、ファミリーマートでコーラを
買いたくなった。
何のことって?それは見てのお楽しみ。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
ビデオメーカー
私の頭の中の消しゴム ナビゲートDVD ~君が僕を忘れても~

 
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2006-03-11 04:05:35

奈々 + ナナ = NANA

テーマ:映画
【NANA(映画)】

<2005年、日本>
●監督/大谷健太郎
●出演/中島美嘉、宮崎あおい 他


ご存知、大人気漫画の映画化。
原作は未読だから、比べてどうのは
言えないけど、おもしろく見れた。

映画は、田舎から上京する列車の中で出会った
奈々とナナが、やがて東京で共同生活を始め、
それぞれにふりかかる出来事を通して、
確かなキズナに目覚めていくところまでを描く。

恋人の後を追って上京し、恋がすべてといった奈々。
一方、歌の道に生きながらも、
置いてきた恋に密かに苦しむナナ。
物語の最大の魅力は、何と言ってもこの対照的な
ふたりのキャラにある。
容姿も性格も正反対。
互いが互いにない部分に反発し、
でも、時に認め合って、補う。
まさに、ふたりでひとりという表現がぴったりだ。
宮崎あおいと中島美嘉のハマリ具合が絶妙。
中島美嘉はセリフがやや棒読み調の部分が気になるが、
ライブシーンでは、さすがにそれを吹き飛ばす迫力。

映画のところどころに、奈々のナレーションが
入るのだが、これが映画に引き込まれる
ひとつのポイントになっているように思う。
ナレーションは、現在から数年後、
すべてが過ぎ去った地点から、奈々が過去を
回想しているという感じで、それがある種の
切なさ、そしてやがて来るべき悲劇といったものを
連想させ、見る者は、
今現在のふたりに感情移入してしまうのだ。

原作が完結していないので、その結末がどうなるのか
はわからないが、映画はヒットもあって続編が決定。
ってことは、また途中で終わるってこと?
映画独自のラストってのは…やっぱり原作ファンが
許さないか。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
下川 香苗, 矢沢 あい, 浅野 妙子, 大谷 健太郎
NANA‐ナナ‐novel from the movie

 
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2006-03-06 03:10:12

夢は美しく、日々は厳しく。

テーマ:
【漫画家超残酷物語(本)】 

●著者 :唐沢なをき
●出版社:小学館(2006.1 発行)
●価格 :¥750


あの永島慎二の名作「漫画家残酷物語」を
現代風にアレンジした物語。
漫画家のおもしろくも哀しい日常が
いくつものエピソードでつづられていく。
(関係ないけど、永島慎二って、
ドカベンの水島新司と昔よく混同していた。
これだけ作品によって絵を描き分けられるって
すげーなあって…。バカだ)

座りっぱなしで、食ってばかりいるので、
ずぶずぶと太っていく漫画家。
漫画家のアイデアや評価は、すべて自分の
おかげと勘違いし暴走するアシスタント。
生活のためにエロ漫画を描き続けるが、
理想とのギャップに苦しむ漫画家。
熱意と押し付けを取り違えた編集者。
仲間のヒットに祝杯をあげつつも、
嫉妬の嵐にさいなまれる漫画家。
過去の栄光を忘れられず、新人に
説教をたれるベテラン漫画家…

などなど、一見、絵のタッチはほのぼの調で、
ノリもギャク的なのだが、その内容は
よく読むと、かなりシリアスで皮肉に満ちている。
なかでも、編集者に打ち切りを宣告された
漫画家が、荒れた末に「この漫画(本書のこと)
を読んだ漫画家の連載は打ち切りになる!」
と負のエネルギーを注入する話は、
笑いながらも、ちょっと怖くなった。

漫画に限らず、創作というのは、ある種の狂気だ。
一歩まちがえば、現実とはかけ離れた世界へ
ワープしてしまう危険性を常にはらんでいる。
そんなギリギリの狭間で生み出された作品には、
テクニックだけでは図り知れない、
作者の魂としか言いようのないものが宿っている。
それが読者の心に届き共鳴した時に、
感動が生まれるのだ。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
唐沢 なをき
漫画家超残酷物語


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