2005-08-31 22:06:13

あの岩まで、20分でいこう。

テーマ:映画
【運命を分けたザイル(映画)】

<2003年・イギリス>
●監督/ケヴィン・マクドナルド
●出演/ジョー・シンプソン、サイモン・イェーツ 他


実際に起きた冬山での遭難事故を描いた
ドキュメントタッチの作品。
ものすごい臨場感に、手に汗握って見た。

登山家のジョー・シンプソンとパートナーの
サイモン・イェーツはアンデス有数の氷壁の初登頂
に成功するが、その下山途中、猛吹雪に見舞われ、
足場が崩れたジョーは片足を骨折する。
イェーツは、なんとかジョーを降ろそうとするが、
滑り落ちたジョンは断がいに宙づりになってしまう。
全く身動きの取れなくなったイェーツは、
ふたりをむすぶザイルを切断する…

とにかく、一体どうやって撮ったんだという
ショットの連続に、息をのむ。
ザイルを切られたジョーが、深いクレバスに
落ちていくシーンは、一瞬目をつぶってしまった。
しかし本当の物語はここから始まる。
奇跡的に一命をとりとめたジョ-は、
自由のきかない足を引きづりながら、
はるか上にある、クレパスの出口に向かって
進んでいく。

一歩進んでは転び、苦痛に顔をゆがめるジョ-。
「あの岩まで、20分でたどり着こう」
そう言って、くじけそうになる自分を奮い立たせる。
以前マラソンランナーの君原健二さんが、
苦しくなった時は「次のあの電柱までは行こう」
と思って、走り続けたという話を聞いたことが
あるが、修羅場の中にある人間というのは、
同じようなことを思うものなんだなと感じた。
なんだか自分がジョーになって、
その苦行を味わっているような気になり、
いつのまにか、顔もゆがんでいた。(笑)

映画のところどころに、実際に遭難に会った
ふたりのインタビューがさしこまれ、
またナレーションも当人たちが行っているので、
全体のリアリティというか説得力が抜群なのだ。
果たしてジョーの運命はどうなるのか?
結果はぜひ、あなたの目で確かめてほしい。
人間の限界を超えた精神力には、魂を揺さぶられる
こ必至だ。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
ポニーキャニオン
運命を分けたザイル


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2005-08-29 11:18:42

さらなる「天」に向かって、進んでいく「才」能。

テーマ:
【決断力(本)】 

●著者 :羽生善治
●出版社:角川書店(2005.07 発行)
●価格 :¥720


子供の頃は、しょっちゅう近所の友達と
将棋盤を前に向き合っていたものだが、
考えると、ずいぶんと長い間将棋は
指していない。
テレビゲームのある暮らしが当たり前の
今の子供たちは、果たして将棋を
することがあるのだろうか。

羽生は誰が見ても、やはり天才と呼ぶしか
ない存在だ。中3で四段に昇進しプロとなり、
その後、19歳で初タイトルの竜王を獲得。
そして96年、名人、棋聖、王将など
史上初の7大タイトルを独占!
と、経歴は華々しいことこの上ない。
その羽生が将棋をどうとらえ、
どういった思考を持って対局に向かって
いるのか、以前から興味があった。

読んでみて思ったのは、案外、僕のような
凡人とも、考えていることにそれほど
差違はないということだ。
常人にはうかがい知れない哲学が聞けるのでは
と期待していた身には、多少肩透かしを食った
感もあったが、それでもやはりハッとさせられる
言葉がいくつもあった。例えば、

「情報は選ぶよりも、いかに捨てるかが重要」
「最先端の将棋を避けると、
 勝負から逃げることになる」
「勝負には、周りからの信用が大切。
 期待の風が後押ししてくれる」 など。

中でも一番勇気づけられたのは、次の言葉だ。

「報われないかもしれないところで、同じ情熱、
モチベーションを持ち続けるのは大変だが、
それこそが才能だと思っている。そしてそういう
人は、たとえ時間がかかっても、必ずいい結果を
残している」

はた目には頂点を極め、もはや目標が
ないのでは?とも思える羽生を支えているのは、
「将棋が好き」という単純明快な思いだ。
もっとおもしろい将棋、楽しい将棋が指したい。
そんな彼にとっては、今の立場でさえ、
ひとつの通過点に過ぎないのかもしれない。


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)
羽生 善治
決断力


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2005-08-27 10:30:12

ヨン様の微笑みの裏側。

テーマ:
【マンガ 嫌韓流(本)】 

●著者 :山野車輪
●出版社:晋遊舎(2005.09 発行)
●価格 :¥1,000


「各出版社から、その過激すぎる内容で
出版拒否された問題作が、ついに解禁!」
といううたい文句で、ただ今話題の書。

またむやみに煽りの入ったものかと思って
いたら、意外にも客観的な視点を持った、
まともな内容だった。
過激というよりも、これまでネットや
他の書物で伝えられてきた事象を、マンガと
いうわかりやすいメディアを使って
うまくまとめた総集編といった印象だ。

冬ソナから始まった韓流ブームも
ピークは過ぎたとはいえ、映画やドラマなど
ひとつの文化として定着した感がある。
そこには、ヨン様の微笑みに象徴される、
フレンドリーで穏やかな日韓関係が見てとれる。

しかしその一方、靖国や教科書をめぐっての
根深い対立、竹島の領土問題など、両国間
には解決の糸口の見えない課題も山積みだ。
その根底にあるものを見抜くのに必要なのは、
正確な知識と多角的な情報ではないだろうか。

日韓関係の明日が不透明な現在、
ひとりひとりがその行き先を考え、
判断するための材料を持つべきだろう。
本書には驚愕の新事実!などはなく、
すでにさまざまな情報に触れてきた者にとっては、
もの足りない面もあるが、表からでは見えない、
もうひとつの日韓関係を知る入門編としては、
十分に読む価値はあるだろう。


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)
山野 車輪
マンガ嫌韓流

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2005-08-25 03:40:32

声無き別れ。

テーマ:映画
【楢山節考(映画)】

<1983年・日本>
●監督/今村昌平
●出演/緒方拳、坂本スミ子 他


カンヌ映画祭でグランプリに輝いた作品。
(後に今村監督は「うなぎ」で二度目の
グランプリを受賞)
日本人なら一度は聞いたことがあるだろう
「おば捨て山」の話だ。

舞台は山奥の寒村。時代はわからないが、
おそらく数百年前だと思われる。
その村には、70歳を過ぎた老人は子に背負われて、
近くの楢山の奥深くに捨てられなければならない
という掟があった。
そして、ある母と息子が、まもなくその行を
迎えようとしていた…。

なんとも言えない重苦しい空気に、
見終わってホッと息をついた。
この手の、昔の村が舞台の作品を見ると
決まって、正体のわからない不安感に襲われる。
小さな村社会の中にうごめく、人間のエゴや情念に
あてられるとでも言うのだろうか。
この映画の中でも、餓えの為に泥棒をした一家に
村あげて凄惨な仕打ちを加えるといった、
正視にたえないようなシーンもあって、
とても穏やかな気持ちではいられない。
山に親を捨てるのだって、その目的は口減らしだ。

坂本スミ子は、この役のために歯を抜いたのだとか。
当時はまだそれほどの年ではなかったと思うが、
もう老婆にしか見えない怪演だ。
その老いた母を背負い、延々と山道を登る、
緒方拳も大変だっただろう。
このクライマックス部分はほとんど台詞がない。
なぜなら、楢山に行く時には、老人は口を聞いては
ならないという決まりがあるからだ。
しかしそれゆえに、言葉ではなく
目で語りあう別れが胸に迫ってくる。

惜しむらくは、母と子のこれまでの関係がわかる
シーンやエピソードがないことだ。
母は子に何を教え、育ててきたのか。
子は母をどう思い、暮らしてきたのか。
それがあれば、見る者の感情移入を誘い、
クライマックスでは、さらに大きな感動を
生んだことだろう。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
東映
楢山節考


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2005-08-22 07:18:41

愛の謎解き。

テーマ:映画
【ロング・エンゲージメント(映画)】

<2004年・フランス>
●監督/ジャン・ピエール・ジュネ
●出演/オドレイ・トトゥ、ガスパール・ウリエル 他


あの「アメリ」の監督と主演女優が再びコンビを
組んだ!という宣伝コピーが目立った作品。
ただこれ、たしかにアメリのようなファンタジック
な演出も顔をのぞかせるけど、
基本的に戦争がテーマだけに、かなりハードな
描写の連続で、予備知識なしで見ると、
そのギャップに驚くかも。

戦地に赴いた婚約者が亡くなったと聞かされるが、
信じられず、戦場で何が起きたかを調べようとする
マチルド。映画は主人公である彼女の心の動きに
沿って展開される一方、戦場での婚約者の様子も
交互に描かれる。
生き残った者を訪ね、さまざまな証言を検証
するにつれて、徐々に浮かび上がってくる真相…。

もったいないなあ…というのが率直な感想。
画面はきれいだし、構成もテンポがダレる
ところもあるけど、工夫されていて見れる。
俳優たちの演技もいい。
だけど、婚約者がどうなったか?
の真実へと迫る道筋が、どうもわかりにくい。
登場人物が多いのと、名前が覚えられないという
のもあるけど、なんだかあまり整理されていない
ようで、すっと頭に入ってこないのだ。
あれが、ああなって、こうなっって…
ああ、そうだったのか!!っていうのがないので、
ラストの感動にも、もひとつ盛り上がるものが
ないのだ。この物語はある種のミステリーなだけに、
ここが弱いと、説得力がなくなってしまう。

それにしても主演のオドレイ・トトゥって、
不思議な存在感がある。
少女のように見える瞬間もあれば、
経験を重ねた、したたかな女にも見える。
「アメリ」の成功も、彼女のこの神秘的な魅力
あってのものだったのだろう。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
ワーナー・ホーム・ビデオ
ロング・エンゲージメント 特別版

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2005-08-19 03:46:51

オカンとボクと、あなたの物語。

テーマ:
【東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(本)】 

●著者 :リリー・フランキー
●出版社:扶桑社(2005.06 発行)
●価格 :¥1,575


各方面で絶賛されている本書。
いやー、参った。参りました。
本を読んでこれだけ泣かされたのは、
いつ以来だろう。
これはおすすめというより、必読本と断言!!

作者の自伝的小説なのだが、主軸となっている
のは、幼少期から死別までの、
オカンこと母親との関係だ。
僕はリリー・フランキーという人のことは、
ほとんど知らない。そういえば、そんな名前の人
いたなあ、たまにテレビにも出てたっけ?
という程度の認識。
しかしそれはたいした問題ではない。
読み進めるうちに、リリーさん、そしてその
オカンのキャラクターは、くっきりとした輪郭を
ともなって、心に入り込んでくるのだ。

「いつか本当にやってくる事。確実に訪れる事が
わかっている恐怖。ボクが一番恐れている事」

母親との別れをさして、リリーさんはこう記す。
これは、すべての人に共通する想いではないか。
それだけに、物語の後半、まさにその恐怖へと
近づくにつれて、つらくて何度も本を途中で閉じた。

親子、特に母と子の関係は、どこかせつない。
母は子に絶対勝てないし、子は母に勝てない。
それゆえ、その勝てない相手が、何かに負けて
消えてしまうことなど、想像すらしたくないのだ。
リリーさんのオカンを見る目、
そこに自然と自分を重ねてしまう。
これは、「オカンとボク」の物語であって、
「あなたとオカン」のドラマでもあるのだ。

文章は軽めのタッチで笑える箇所もいっぱい。
(本来の持ち味はこっちらしい)
本当に時々しか出てこないオトンも、
スパイスのように、いい味を出してる。
悲しく涙が出てしまうのだが、読み終えると、
あたたかい陽だまりにつつまれているような、
安らぎを覚える。それはとりもなおさず、
オカンの偉大なる愛にちがいない。


■個人的ハマリ度  ★★★★★(★5つが最高)
リリー・フランキー
東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~


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2005-08-17 03:23:48

呪いは、国境を超えて。

テーマ:映画
【呪怨/THE JUON(映画)】

<2004年・アメリカ、日本>
●監督/清水崇 
●出演/サラ・ミシェル・ゲラー、石橋凌 他


日本人監督として、はじめてアメリカで興行収入
1億ドルを突破した作品としてクローズアップ
された作品。
とはいえ、国内ではオリジナルビデオ、そして
劇場版とすでに4作が製作、公開されているの
だから、正直かなり食傷ぎみ。
(まあ全部見てる僕も僕だけど)

東京の国際大学で福祉を学んでいるカレンは、
郊外の家に住む米国人一家の介護を手伝うことに。
その家には軽度の痴呆を抱えた母親エマと、
息子のマシュー、妻のジェニファーが暮らしていた。
だがその部屋に入ったカレンは、エマに襲いかかる
黒い影を見てしまう……。

大まかなストーリーは、日本版とほぼ一緒だが、
登場人物が日本人から外人になったことで、
なんだか奇妙な違和感を覚える。
でもそのことがマイナスにはなっていない。
ホラーとは、一種のファンタジーなのだから、
畳と金髪の組み合わせという非日常も、
案外すんなりと入っていけるのだ。

映画の真のヒロイン(笑)とも呼ぶべき
伽椰子さんの登場には、さすがにもう驚きは
ないが、本作ではじめて彼女に出会ったアメリカ人
は、さぞびっくりしたに違いない。
僕もビデオ版の第一作で見た時は、
いやーな汗をかきながら、彼女から目をそらす
ことができなかった。
伽椰子さんが夫に殺された理由など、日本版には
なかったエピソードが加わったことで、ストーリー
に深みが出ている点がよかった。
しかし演出的には、日本版のベタベタと粘りつく
ような印象にくらべ、かなりあっさりしているよう
に感じた。まあこの辺は、お国柄に合わせてタッチ
を変えたのだろう。

このあとアメリカ版のパート2の製作も予定されて
いるとか。もうお腹いっぱいと言いながら、
また見てしまうんだろうなあ。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
ジェネオン エンタテインメント
THE JUON -呪怨- ディレクターズ・カットコレクターズ・エディション


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2005-08-14 00:13:31

乃南ワールドの鼓動。

テーマ:
【風紋/上・下(本)】 

●著者 :乃南アサ
●出版社:双葉文庫(1996.09 発行)
●価格 :¥900(上巻)、¥800(下巻)


乃南さんの作品は、けっこう好きでかなり読んで
いる。中でも直木賞を受賞した「凍える牙」の
音道刑事シリーズは、キャラの立ち方が抜群で、
新しいシリーズが出る度に買っている。
他にも短編にも名作が多く、文章のうまさと、
心理描写の巧みさにはいつもうならされる。
もっともっとメジャーになっていい存在だと
思う。(いや十分メジャーだけど)

さて本作だが、乃南さんの作品では比較的初期に
あたる。上下巻で計1000ページ近い大作だ。
母親を殺された家庭と、その加害者である
高校教師の家庭。物語はこの2つの視点が交錯して
進む。それに事件を追いかける若い新聞記者が
からんでくる。

うーん、ディテールは申し分ないのだが、
ちょっと冗長な印象を受けた。
決して悪くはないのだが、特別心に響くものが
ない。理由は物語が平板すぎるところに
あるように思う。
設定からすれば、もっとドラマチックにできそう
なものだが、終始淡々と話は進み、何か事件の
客観的なリポートを読んでいるような感じ。

キャラもそれぞれの事情を抱え、動いているの
だが、それも通り一遍の印象を拭えない。
キャラ造型にかけては天下一品の乃南さんに
してはどうしたんだろ?っていうぐらい
人形っぽい薄っぺらさを感じてしまう。
ミステリーとしても、最期におー!という
どんでん返しがあるわけでもない。
生意気なことを言うと、やはり作家というのも
キャリアを積むにつれて、うまくなっていくもの
なんだなあと感じた。

この作品には、続編の「晩鐘」という作品が
これまた上下巻の大作としてあるようだ。
そこでは、母親を殺された娘と、殺した男の
息子が、年月を経て再会するのだとか。
これだよこれ!こういうのが欲しいんだ!(笑)
もしかして本作は、続編への予告編に
過ぎなかったのか?
乃南さんも、キャラのその後がずっと気になって
いたのが執筆の動機だったらしい。ということは、
本作は本人にとっても、どこか消化不良の面が
あったということだろうか。
しかし、なんだかんだと文句言ってるようで、
一刻も早くその続編が読みたくなっているのだから、
乃南ワールドの威力、恐るべしだ。


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)
乃南 アサ
風紋〈上〉
乃南 アサ
風紋〈下〉


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2005-08-10 10:27:06

河は、ふたりの恋と、ふたつの国の間を流れ…

テーマ:映画
【パッチギ(映画)】

<2004年・日本>
●監督/井筒和幸
●出演/塩谷瞬、沢尻エリカ、オダギリジョー 他


井筒監督の前作「ゲロッパ」にはガッカリさせ
られただけに、この作品は敬遠気味だったのだが、
評判の良さにつられて見てみた。

舞台は1968年の京都。高校二年の康介は、
ある日出会った朝鮮高校の女子キョンジャに
一目惚れする。しかし彼女は、康介の通う高校と
対立する朝鮮高校の番長アンソンの妹だった。
康介はキョンジャの気を引くため朝鮮語を学び、
彼女が学校で演奏していた「イムジン河」を
弾こうと、ギターを手にして練習に没頭する…

やわらかい京都弁が飛び交う中、当時の時代の空気
が全編に漂っていて、一気に引き込まれる。
井筒監督お得意のケンカ節もそこかしこに
散りばめられ、画面からは青春のエネルギーとも
いうべき躍動感が、ジンジンと伝わってくる。

主役のふたりも全く知らなかったが、自然な演技が
なかなかいい。先入観なく見れたことが、
高校生の瑞々しいイメージにつながった気がする。
「イムジン河」の哀愁を帯びたメロディも、
作品のムードにマッチしてせつなさを感じさせて…
と、これ井筒監督の最高傑作かも!と思って
見ていたのだが、後半になって
どうも展開に疑問を持ってしまった。

僕はこれ、てっきり主役ふたりのラブストーリー
が主軸の映画だと思っていたのだが、
途中から物語は、日本と在日の人々の対立の歴史の
方にスライドしていくのだ。
激しい葛藤に、主人公がギターを壊して
川に捨てるシーンがあるのだが、それも日本人の
自分に向けられた彼らの怒りの目に、
感情が爆発して、という風に映った。
もちろん主人公が朝鮮学校のヒロインに恋する話
なのだから、そういう要素があるのは当然だ。
しかし、恋のために始めたギターなら、
やはりそれを捨てるのも、恋に破れて、
であるべきではなかったか。
構成要素の比重が、
在日問題の中の恋 > 恋の中の在日問題
になってしまったのが残念。逆であってほしかった。
内心、井筒版「ロミオとジュリエット」を
期待していたのだ。

まあ、これはあくまで個人的な印象なので、
そのあたりが気にならないという人も多いと思う。
テレビ番組等で、日朝問題について、かなり辛らつな
コメントをする監督を、何度か見た事がある。
きっとそこに、監督のメッセージが込められて
いるのだろう。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
ハピネット・ピクチャーズ
パッチギ ! スタンダード・エディション

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2005-08-03 11:06:00

感じる読書。

テーマ:
【GOTH/夜の章/僕の章(本)】 

●著者 :乙一
●出版社:角川文庫(2005.06 発行)
●価格 :¥460(夜の章)、¥500(僕の章)


「第3回本格ミステリ大賞」受賞の連作短編集。
ハードカバーでは一冊だったものが、
文庫ではなぜか分冊になって登場。
わざわざ分ける程の分量でもないし、
作品の並び順も変わってしまっている。
商売はわかるが、こういうのはやめてほしいもんだ。

主な登場人物はふたり。
心に果てしない闇を抱える「僕」と、
その僕の本性を見抜いた少女、森野夜。
「殺人」をキーワードに、時に残酷に、
時に切なく、物語は展開される。
全部で6つの話から成っているのだが、
そのリンクのさせかたが、もう絶妙としか
いいようのないさじ加減なのはさすが。

しかし、乙一自身もユーモアたっぷりのあとがきで、
書いているのだが、この本、果たして
本格ミステリと呼んでいいのだろうか?
たしかにトリック的な要素はあるし、Aだと思って
いた人物が実は…というような謎解きもあるのだが、
作者が描きたかったのは、そこではないだろう。

乙一の作品を読むのは、
「ZOO」「暗いところで待ち合わせ」に続いて3作目
だが、本作はその中では一番感想を言いにくい。
これこれこういう本だと、一言ではとても
表現できないのだ。
何か、深い水の底で、ナイフを手にして、
そこに映り込む自分と対話しているような、
そんな感覚を覚えるのだ。
これは細かく筋を追うというよりも、
「感じる」小説なのだと思う。

ただ、これは個人的な好みの問題だが、
登場人物を徹底して突き放して描いているため、
感情移入というものはほとんどできない。
小説を読む時は、キャラの内面に入り込みたい
僕にとっては、そのあたりで物足りない面もあった。
作者自身もキャラとの距離の取り方に迷いが
あるような印象も受けたが、これは考えすぎだろうか?
あなたは読んで何を感じるか。ぜひ試してほしい。


乙一の「暗いところで待ち合わせ」の感想は以下

http://ameblo.jp/katsuzi-junkie/entry-10002189011.html#cbox


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)
乙一
GOTH 僕の章
乙一
GOTH 夜の章


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