中国、年間60万人の「過労死」背後に独特の「差別文化」が存在 | 勝又壽良の経済時評

中国、年間60万人の「過労死」背後に独特の「差別文化」が存在

『習近平大研究』勝又壽良著

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所得上昇とともに生活苦へ
労働法を無視の長時間労働

中国人のビヘイビアは、世界でも珍しいものが多い。以前からそのことに、私は気付いてきた。具体的に言えば、「大言壮語」(ほら吹き)である。先進国でちょっと他に類がないものだ。人間誰でも、少しは教養を身につけると、謙虚になるものである。中国の場合は、まったく違うのである。財産が増え地位が上がるに従い、増長しふんぞり返る言動をするのである。これは個人と国家の両方において、はなはだ顕著であるから傍迷惑である。

中国がGDP世界2位の座についた2010年以降、中国政府は周辺国を「威嚇」する言動が増えている。日本へは、尖閣諸島をめぐって軍事力をちらつかせ始めている。米国に対しては、「新しい大国関係の樹立」を呼掛けており、世界の「2大強国」を印象づけようと躍起である。だが、中国国内の政治・経済などを子細に眺めると、どうしてどうして、実態は依然として「発展途上国」なのである。このギャップはどこから来るのか。「大言壮語」という中国独特の「業」であり、「差別文化」がなせるわざなのだ。

中国では現在、働き過ぎによる「過労死」が年間60万人にも上がっている。大きな社会問題である。かつての日本でも高度成長時代、こうした現象は存在した。だが、「一過性」の問題として解決した。労働基準法で労働時間を制限することによって、年間総労働時間は欧米先進国並みに改善している。中国の場合、日本とは事情が大いに異なっている。人々は長時間労働を厭わず、財産を築き社会的地位を上げることが最終目的である。他人と差別化して、自慢したいという潜在的な意識が働いている。

こうした中国人の生活態度では「過労死」はなくならないのだ。他人よりも抜きん出たいという「差別文化」が、中国人の意識には強い結果でもある。「大言壮語」が中国人最大の特色である以上、「過労死」は決してなくなるはずがない。

所得上昇とともに生活苦へ
『中国新聞週刊網』(7月12日付け)は、中国では毎年60万人が過労死している実態を次のように報じた。

①「最近、中国で若者の過労死が相次いでいる。世間は『仕事が生活のすべてではない』とよく言うが、雇用競争や住宅ローンに家賃、生活費、父母の扶養費、子供の教育費など、生活の基盤を支えるのが仕事だ。仕事を維持することは、生きていくために必要なことであり、体調が多少悪くても仕事は休めない。上司から残業を頼まれたらイヤとは言えない状況だ」。

中国では、皮肉にも所得水準が上がるとともに実質上、生活が苦しくなっている。「雇用競争や住宅ローンに家賃、生活費、父母の扶養費、子供の教育費など」で多額の出費を迫られている結果である。ここ10年以上続いている住宅バブルは、一般の勤労者生活を圧迫しているのだ。持ち家でなくても借家は、住宅バブルの跳ね返りで家賃が暴騰している。住宅バブルに潤った層は、賄賂で大儲けした一部の政府高官だけである。

雇用競争は、大学の数は増えたがサービス産業の発展が遅れ、高学歴者の数と職場とのミスマッチが引き起した現象である。高度成長が続いたというのに、雇用競争が激化している背景には、産業構造の立ち遅れ問題が横たわっている。今後の経済成長率低下は、一層の雇用競争を生むはずである。

②「中国誌『小康』と清華大学が共同で行った調査によると、『健康と引き換えにして、金銭や地位を得たいと思うか?』との問いに、17.2%の人が『そう思うし、これまでもそうしてきた』と答えた。42.1%の人が『そうは思わないが、そうするしかない』と答えている。統計では過労死で毎年60万人が命を落としている。毎日平均1600人が亡くなっている計算になる」。

「健康と引き換えにして、金銭や地位を得たいと思うか?」との問いにたいして、積極的と消極的を含めて、実に59.3%の人々が肯定している。この驚くべき事実をどのように解釈すべきであろうか。先進国の人々との根本的な違いは、中国では「メンツ」が大義になっていることであろう。中国の個人アイデンティティは、「金銭や地位」にある。それを手に入れるためには、「健康と引き換えてもやむを得ない」という認識である。この現状を見れば、中国から「過労死」は消えるはずがない。

③「中国で頻発している過労死は、最近若年化の傾向にある。中国人力資源社会保障局の関係者は『中国の労働保障の範疇に“過労死”という概念はない』と話す。中国の過労死は何の保障も得られないのが実情だ。ここ数年、過労死に関する法整備を求める声は急速に高まっているが、まず労働者自身が自分の健康を第一に考える必要がある」。

中国の労働保障の範疇には「過労死」という認識が存在しないという。したがって、これによる死亡は何の保障も得られない。「無駄死に」「犬死に」というはなはだ不名誉なことで片づけられるのだ。とすれば、一人一人が勤労意識を変えて、個人のアイデンティティは「金銭や名誉」でなく、自己の納得した生き方を求めることである。問題は、中国文化に、こうしたアイデンティティが存在しない点である。「私」という概念は、邪悪な存在として位置づけられている。まさに、中国文化の「危機」と言っても良い。

労働法を無視の長時間労働
『人民網』(7月16日付け)は、過労死問題について次のように報じた。

④「我々の身の回りは『ストレスが大きすぎる』『いつも具合が悪く、眠れず、忘れっぽい』など、さまざまな『過労症』で満ちあふれている。中国は今や、世界で労働時間が最も長い国のひとつとなり、1人当たり労働時間は日本と韓国を上回った。労働は確かに『誇らしい』行為だが、『働き過ぎ』は身体の健康や生命の安全を脅かす。多くの若者が『働き過ぎ』になってしまった背景にはどのような事情があるのだろうか?」。

この記事を読むと、日本を「長時間労働国家」の見本のように扱っているが、これは間違いである。後述の通り年間総労働時間数では、米国を下回り、英・独・仏をわずかに上回っているのが実態である。1989年の日本の総労働時間数は2120時間であった。その後の「時短」運動が功を奏して、最新の国際比較では1800時間を大きく割り込む成果を上げている。

⑤「『労動法』では、労働者の1日の労働時間が8時間を超えず、1週間の平均労働時間が44時間を超えないことと定められている。雇用者が労働者をやむを得ない事情で残業させる場合、残業時間は労働者の身体的健康を損なわないという条件のもとで、1日3時間、1カ月36時間を上限とする。これら2項目の条文が、一部企業では完全に軽視されており、労働監督部門の管理監督力が不足していることが現状から容易に見て取れる。『過労死』という極端な事態が発生してからでは遅すぎるのだ」。

日本の労働基準法では、1日8時間、1週40時間と決められている。OECD調べ(2010年)によれば、日本の年間総労働時間数は1733時間である。米国の1778時間を下回ったが、英国(1647時間)、ドイツ(1419時間)、フランス(1562時間)を上回っている。中国の年間総労働時間数は不明である。1週の平均労働時間8.2時間と法定の8時間を上回っているようである。共産主義国家で労働者を大切にすることが建前の中国において、「過労死」とは許されざる事態のはずだ。

⑥「たとえ訴訟で政府の管理監督部門が『過労死』として認めても、企業側に科せられるのはわずかな額の罰金のみで、法に背くことに対する代価はかなり低い。中国の法律には『過労死』に関する明確な境界線は設けられておらず、遺族が理にかなった賠償金を受け取れるケースはごくわずかで、労働者に過酷な労働を強いる違法企業への罰則による抑止力は極めて限られている」。

過労死に対して企業側に科せられる罰金がわずかであるのは、これも共産主義国家に似つかわしくない事態である。日本では長時間労働が批判されてから、20年余で約20%の労働時間短縮を実現した。果たして、中国では可能であろうか。結論から言えば、不可能であろう。理由は、中国の文化が「金銭や地位」を基準にして、自己のアイデンティティにしているからである。日本を含めた欧米先進国では、個人のアイデンティティが「金銭や地位」に存在するわけではない。「自分らしく生きる」という個人の思想に根付いている。中国の思想では、「個人」を排除しており、「集団」を基準にしている。そのことを考えると、中国が欧米並みの認識を持つことは絶望的と言わざるを得まい。

中国の国家としてのアイデンティティもまた、「金銭と地位」にあることは明らかである。GDPが世界2位になってから、中国の日本に対する態度は急速に変わった。日本を「格下」に扱う姿勢が露骨に出ているのである。その極めつけは、尖閣諸島をめぐる「悪口雑言」のほかに、軍備をちらつかせながら日本へ圧力をかけ始めていることである。

中国の「挑発的行動」が日本の反感を呼ぶほかに、日米安全保障条約に基づく米国への「挑戦」とも映るのである。中国がこうした見え透いた行動を取れば、日米が結束して対応することにより、逆に経済的にも「包囲」されるリスクを招くのでる。具体的に言えば、日米がTPP(環太平洋経済連携協定)経済圏で力を蓄え、中国を排除することも可能であるのだ。「民度」の低い中国が、いま最も必要とするものは日米と紛争を起こすことではない。ただ、国民生活の安定だけを求める政治の指向である。現実は、ここから著しく逸脱しており、「金銭と地位」をひけらかした中国人の「業」を余すところなく示しているのだ。

(2013年7月29日)



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