「無印良品は仕組みが9割」松井忠三(著)
著者の松井忠三氏は、現在は無印良品(株式会社良品計画)の名誉顧問ですが、本書執筆当時は同社の会長を務めていました。
本書では著者が無印良品社長時代に行った大改革のノウハウを、惜しみなく公開しています。それは「仕組み化」を徹底するということです。
無印良品は元々「西友」のプラベートブランドとして誕生し、それが良品計画として独立しました。
多くのファンを持ち、海外にも進出して順風満帆な経営をしてきている印象がありますが、15年ほど前に一度大きな経営不振に陥った時期があります。
そのいちばん困難な時に、同社の社長に就任したのが、著者の松井氏です。
松井氏が経営改革の軸として取り組んだのが、業務の「仕組み化」です。想像するに、新しい面倒な取り組みに対する社員の反発は、相当なものだったでしょう。個人の知識やスキルとして存在しているものを全て見える化するために、膨大なマニュアル作りを行い、やり遂げます。
店舗で使うマニュアル「MUJIGRAM」はナント!2000ページに及ぶそうです。
結果、業績のV字快復はご存知の通りです。
多くの企業で課題になっていると思いますが、この人でなければ出来ない仕事が存在していたり、この人がやらなくてもいい仕事をなかなか人に任せられなかったり、仕事が人についてしまっている良くない状態。
本書で著者が伝えようとしているのは、その課題を解消するためには、すべての業務を「仕組み化」して、誰でも同じように出来るようにすること。そして「仕組み」が陳腐化しないように、常に更新し続けることが最善の方法であるということです。
著者はマニュアル化するのは目に見える業務だけではなく、会社が成長するために重要であるヒューマンスキルについてもマニュアル化するべきだと言っています。それを個々のオリジナルのマニュアルとすることで、同じ失敗を繰り返さずに円滑な業務遂行ができると、自身の経験を語っています。
いま企業にとって、この「仕組み化」作りは、将来に向けた一手として非常に重要であることは間違いありません。
仕組みを作り、ムダを減らし、属人化を解消し、豊かな暮らしを営むための仕事とプライベートの共存を実現するために、今こそ徹底的な「仕組み化」に着手しなければならないことを、改めて認識させられる一冊です。
(了)