柄糸の巻き直しには良く依頼されるのですが、「ついでに」と難しい依頼をされる事がよく有ります。

 

 そこで、何故それが難しい依頼なのかを分かって頂く為に、大雑把ですが、柄の作成に付いて、簡単に書いてみたいと思います。

 

 有り合わせの材料で写真を撮ったので、少々の無理は勘弁してください。

 

最初に、柄木に茎の入る穴を掘り込んでいきます。

この時、ハバキの幅や、鍔の厚み、切羽の厚みも凡そ計算して彫りこんでいきます。

 

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 内側に、茎の入る穴を掘った柄木を二枚貼り合わせて、一つの長方形の塊にして、今度は縁頭に合わせて木を細く削っていきます。

 

 サメの厚み、柄糸の厚みも考えながら細くしていき、両端は縁金と頭金がガタつかない様、びたりと合う様に作ります。

         

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 柄木の表面にサメを巻いて固めます。そして、縁金と切羽、鍔、鍔、ハバキが隙間なくピタッと揃うように目釘穴を開けて行きます。

 

 この時も、使う柄糸の厚みを考え縁頭とサメの高さが揃う様にサメの裏をすきながら、厚みを調節します。

 

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 最後に目抜き付けながら柄糸を巻いて、一先ず柄は完成します。

 

 かなり大雑把ですが、簡単に言うとこんな感じです。

 

 しかし、ここには、ハバキから、切羽、鍔、切羽、縁金がしっかりと隙間なくくっっいて、柄糸もあまり表面に張り出さない様微妙なバランスを取りながら作成されます。1㎜も誤差が有ると、ガタガタの柄に成ってしまうので、大変な精度が求められます。

 

 また、サメが短冊の柄を、巻きに変えたり、巻きザメの柄を短冊に張り替えるのも基本的には出来ません。

 

 (写真は、居合刀用の柄木ですが、サメを短冊に貼る為の溝が最初から掘って有ります。逆に巻きザメの柄木は溝を掘りません。柄木を作った時点で、短冊用か巻きザメ用か決まりので、単純な張替は利きません)

 

 

 で、ここで最初に戻って難しい依頼ですが、柄糸の巻き直しに合わせて、縁や頭の金具も変えて欲しいと言う依頼が良く来ます。

 

 ただ、先程説明した様に、全ての金具に合わせて柄は作成されます。

 

 全く同じ種類の金具でさえ、個体差で隙間が生じる事も有ります。

 

 まして、全く違う物を持ってきた場合、そのまますんなり交換できる可能性は非常に低いのです。

 

 金具に合わせて柄木を削って行って柄を作るのですから、金具が変われば、合う方が稀なのです。

 

 この場合は、基本的には、柄の作り直しになります。

 

 巻き直しで変更できるのは、せいぜい目貫位と成ります。

 

 鍔の変更も、鍔の厚みを計算して柄が作成されますので、簡単に行かない時が結構あります。

 

 特に、元の鍔より分厚い鍔だと、ハバキと目釘穴の位置関係から物理的に入りません。

 

 基本的な構造を理解してもらうと、あまり変な依頼は、誰もされないと思います。

 

 

 

 

 

スッキリとしたスタイルが綺麗なシルエットを映しています。

刀身もなかなか綺麗です。

【研ぎ上がり、美しいお刀】「正次」65.5cm 、鑑賞に・居合・試斬刀として!!!